石神井バレエ・アカデミー公演「Triple Bill」
2017.7.4 文京シビック大ホール

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Shakujii Ballet Academy

Triple Bill


『一枚の絵』


音楽/アストル・ピアソラ
作・振付/山崎敬子
高岸直樹
『バジールのアトリエ ラ・コンダミンヌ通り』という絵画からインスパイアされた作品。作者のフレデリック・バジールはモネと同時代の画家だ。
池本祥真 細野 生 土橋冬夢
出演は高岸直樹、秋元康臣、浅田良和、池本祥真、細野 生、土橋冬夢の6人で、ピアソラの曲が使われた。幕が開くとアトリエを模したセットが表れ、高岸のソロで始まる。バンドネオンの音に合わせてシモテからカミテへとステップを踏むなど、軽快な動きだが、時おり肩を落としたり、頭を抱えたりと、何やら苦悩しているようである。
浅田良和
秋元康臣
続いて池本たちが登場。池本、細野、土橋のエネルギッシュなトロワの後に、浅田のキザなソロと、秋元による酔っ払いのダンスが挿入される。浅田は、持ち前の深いプリエで腰をしっかりと落としたり、空中に高くジャンプしたりと、ダイナミックでひと癖ある男の雰囲気。秋元は千鳥足にも伸びやかさがあり、揺らぎのあるスリリングな踊りを見せた。
前半は高岸の内面にフォーカスされていたが、迫力のあるステップが次から次へと披露されて、舞台は徐々に陽気さを増す。仲間たちに苦悩を訴えていた高岸の機嫌もなおり、終盤は和気あいあいと踊る。ラストは『リベルタンゴ』で盛り上がり、『アトリエの情景』に描かれた配置にポーズが決まって幕が降りた。
高岸は一番のベテランだが、照明を浴びて最も若々しいのも高岸だった。”苦悩"の理由は具体的には説明されないが、芸術家にありがちなものとして安易に見過ごすことはできない。印象派のムーヴメントの到来を待たずして普仏戦争で戦死した、バジールへの供養と解釈するのはひねり過ぎだろうか。