石神井バレエ・アカデミー公演「Triple Bill」
2017.7.4 文京シビック大ホール

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Shakujii Ballet Academy

Triple Bill


隅田有のシアター・インキュベーター

外崎芳昭と山崎敬子が主宰する石神井バレエ・アカデミー公演《トリプル・ビル》が上演された。演目は『パ・ド・カトル』、山崎振付の『一枚の絵』と『四季』。午前中に九州に上陸した台風3号が北上する中、文京シビックホールは熱気に包まれた。


『パ・ド・カトル』

音楽/チェーザレ・プーニ
原振付/アントン・ドーリン
グラーン:酒井はな
タリオーニが吉田都、グラーンが酒井はな、グリジが西田佑子、チェリートが沖 香菜子という豪華キャスト。幕が開くと、スポットライトの中、吉田を芯に3人が囲む有名なポーズが現れる。序盤の4人で踊る場面では、ほとんど床を離れない奥ゆかしいジャンプや、少し上体を傾けて客席に愛嬌を振りまくアラベスクなど、ロマンティック・バレエの趣に溢れていた。腕の動きや視線を使ったダンサー同士のコミュニケーションが優雅だ。横に一列に並び、ポアントワークを見せるシーンでは拍手が湧き、前半が終わりそれぞれのソロに移る際には、客席からうっとりとした溜め息が聞かれた。
グリジ:西田佑子
チェリート:沖 香菜子
タリオーニ:吉田 都
グラーンとチェリートの配役が、筆者の予想とは逆であったが、そのため沖のソロの前に、吉田と酒井のデュエットという贅沢なシーンが見られた。ベテラン二人によるイントロダクションに続いて登場した沖は、すでに『ラ・シルフィード』のタイトルロールなどで、ロマンティック・バレエのスタイルを体得している。長いチュチュがふわりと揺れるのと同じくらい柔らかく腕を使い、アントルラッセなどの大きなジャンプも、しなやかに仕上げていた。
音楽性にも華にも優れた4人は、ことさらにステップを合わせることなく、各自が”主演女優”として最も映えるタイミングで踊っていた。それを許すのが『パ・ド・カトル』という作品であり、そのように踊られてこそ本作の魅力が生きる。ダンサーの年齢を語るのは無粋ではあるが、吉田は早くも50代という。50代から20代まで各年代からキャストされていたのは、はたして意図的なのだろうか。とまれ、表現者として丁寧に経験を積んできたダンサーは、その時々に相応しい輝きを持つ。バレリーナのキャリアは存外長いものなのだなぁと気づかされるステージだった。