井上バレエ団「ジゼル」

2012.7.21 文京シビック大ホール

2of 3
Inoue Ballet
「Giselle」

ヒラリオン:藤野 暢央
 クールランド公の狩りの一行が舞台に現れます。クールランド公の役は、かつて『ジゼル』をイヴェット・ショヴィレやアリシア・アロンソといった大物を相手に踊ったことのあるシリル・アタナソフが演じました。彼は1980年の井上博文によるバレエ劇場30で『ジゼル』を鉢谷のりこと踊ったこともあり、井上バレエ団との交流は長いのです。登場すると客席から大きな拍手がわきました。

しかしこの拍手は、彼といっしょに登場した藤井直子が演ずるバチルド姫へのものでもあったと私は思います。藤井直子は長らく井上バレエ団のプリンシパルをつとめ、その可憐なバレリーナぶりで人気のあった人だからです。こういうキャリアのある人が脇を固めるようになると、バレエ団の芝居の厚みがいちだんと増してきます。そういう意味ではジゼルのお母さんのベルタを演じた福沢真璃江もそのひとりです。

藤井 直子/島田 衣子&/エマニュエル・ティボー/藤野 暢央
 ジゼルの島田衣子は、2009年の『くるみ割り人形』以来の舞台復帰。アルブレヒトのノックに応じて彼女がドアーを開けると「お帰りなさい」の拍手が劇場を包みました。ティボーのアルブレヒトとのやりとりは、最初からとてもいい感じ。踊るところでもかつての輝きがもどっていました。
福沢真璃江/島田 衣子
場面が進み、ジゼルとバチルド姫がこそこそ話すところになります。台本では「あなたには、好きな人がいるの?」とバチルドが聞くところですが、ここで二人は実際にどんな言葉を交わしたのか、ちょっと気になるところでした。第1幕最後の狂乱シーンは、抑え目の演技がかえってジゼルの精神的な打撃の大きさを感じさせ、観客の涙をさそいました。
島田 衣子/福沢真璃江/エマニュエル・ティボー