井上バレエ団「ジゼル」

2012.7.21 文京シビック大ホール

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Inoue Ballet
「Giselle」


山野博大の電脳バレエ横丁徘徊

井上バレエ団7月公演《第100回記念公演》
『ジゼル』で復帰の島田衣子を見る
 2012年7月21日、文京シビックホールで井上バレエ団の7月公演が行われ、関直人振付、ブリュノ・コーアペ演出・指導による『ジゼル』が上演されました。この公演は井上バレエ団の《第100回記念公演》であると同時に、産休で永らく舞台から遠ざかっていた島田衣子の現場復帰の公演でもありました(22日はジゼルを宮嵜万央理が踊る)。アルブレヒトは両日ともパリ・オペラ座プルミエ・ダンスールのエマニュエル・ティボーが踊りました。
ジゼル:島田 衣子&アルブレヒト:エマニュエル・ティボー
 関直人版の『ジゼル』を井上バレエ団が前に上演したのは2002年7月のことです。その時、ジゼルは島田衣子と藤井直子のダブル・キャストで、アルブレヒトはバンジャマン・ペッシュでした。その前の上演となると1992年の7月まで遡らなければなりません。この時のジゼルは岡本佳津子、井神さゆり、藤井直子のトリプル・キャストでした。
クールランド公:シリル・アタナソフ バチルド姫:藤井 直子
 幕が開くと、ライン川に近い小さな村の景色が見えます。シモ手にジゼルの家があり、カミ手にはアルブレヒトの隠れ家が…。これはピーター・ファーマーのデザインで、独特のやわらかな色彩が持ち味です。それをきちんと吊り込んで、デザインの良さをたっぷりと見せてくれた裏方さんたちの仕事ぶりを、まず高く評価しておきたいと思います。
ベルタ:福沢真璃江
パ・ド・ドウ:小高絵美子&アレクサンダー・ボジノフ
 関直人の振付がきちんと観客に伝わるように、今回はブリュノ・コーアペがこと細かに演技指導をして、舞台を完成させたということです。その効果は随所に表れていました。波乱の多い第1幕のさまざまな場面を、主役だけでなく、コール・ド・バレエのひとりひとりまでが参加して、しっかりと作り上げていたのです。
 ぶどう狩りに行く男女が舞台を横切って行きますが、ただなんとなく歩いているのではなく、細かく演技が指定されていました。そうすることで農村の朝の、活気のある風景が観客に伝わり、その後に続くアルブレヒトの登場、ジゼルとの出会い、ヒラリオン(藤野暢央)とのもめごとと続く個々のドラマが現実味を帯びたものになりました。