2015都民芸術フェスティバル
(公社)日本バレエ協会公演
『コッペリア』全幕
セルゲイ・ヴィハレフ復元振付けによるマリウス・プティパ版
2015.3.7&8 東京文化会館大ホール

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Japan Ballet Association
「Coppelia」

コッペリウス:マシモ・アクリ
スワニルダ:下村由理恵

桜井多佳子の感じた!バレエ
ヴィハレフ・マジックに酔いしれる

 緞帳が開く前に演奏された、その前奏曲から舞台に引き込まれた。ドラマを予感させ、それが広がり、やがて踊り出したくなるようなメロディへ。アレクセイ・バクラン指揮、東京ニューシティ管弦楽団の演奏はテンポ良く、エネルギッシュな楽しさに満ち溢れていた。
マズルカ:中野亜矢子&田中英幸    小岩井香里&長清 智
神父:柴田英悟          市長:小原 孝司
 もしかしたら、ダンスとともにこの演奏もヴィハレフ・マジックなのかもしれない、と気づいたのは第一幕の「マズルカ」「チャルダッシュ」のシーン。
スワニルダ:法村珠里
 物語の舞台ポーランドとハンガリーのそれぞれの「民俗舞踊」。その土着のダンスに、舞台で披露されるための様式美を加味し、アカデミックに昇華させた「キャラクターダンス」としての「マズルカ」と「チャルダッシュ」。「キャラクターダンス」はロシアなど海外のバレエ学校では必修科目だが、日本ではそこまで浸透していない。

 しかし、この公演では「キャラクターダンス」を堪能することができた。民俗舞踊の特有の、大地を踏みしめるような重みのあるステップは、バレエの舞台用に洗練され軽やかさも持つ。ダンサーたちの動きはリズムに乗り、同時にリズムを生み出していた。

フランツ:浅田良和&法村珠里
フランツ:芳賀 望&下村由理恵
スワニルダの友人
 今回の『コッペリア』はプティパの原振付をセルゲイ・ヴィハレフが復元した版。そのヴィハレフ自身が振付指導にあたった。オーケストラとダンスの見事な統一感は、復元者の直接指導の大きな成果だったと思う。所属団体の違うダンサーたちがこれだけの結束力をもったのも、オーケストラが踊るように演奏したのも(もちろん指揮者の力は大きいが)「ヴィハレフ・マジック」だったのではないか。
チャルダッシュ:安藤明代&奥田慎也
チャルダッシュ:小林由枝&奥田慎也
 ただし、ヴィハレフの指導が隅々にまで行き渡っていたのには、通訳兼ミストレスをつとめた鈴木未央の存在が大きいだろう。ヴィハレフがプリンシパル・バレエマスターをつとめていた時期にノボシヴィルスク・バレエ団に在籍、『コッペリア』でロシアの権威ある賞=ゴールデンマスク=を受賞したときの出演メンバーであり、モスクワのボリショイ劇場のほか日本、スペイン、ポルトガル公演にも参加している。キャラクターダンスを得意とし、もちろんヴィハレフの信用も厚い人物だ。