谷桃子バレエ団新春公演「Giselle」全幕
22.1.15&16 東京文化会館 大ホール

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Tani Momoko Ballet
「Giselle」

アルブレヒト:檜山 和久
ジゼル:佐藤 麻利香

隅田有のシアターインキュベーター

『ジゼル』は谷桃子バレエ団でもっとも格の高い作品の一つだ。2015年に94歳で亡くなった、日本を代表するバレリーナの谷桃子は、長年ジゼルを当たり役とし、その舞台がいかに素晴らしかったかを、私は批評家の故・山野博大氏から幾度となく聞いている。

また現芸術監督の高部尚子氏は1987年の公演でジゼル役に抜擢され、3夜連続で主演を勤めるという大役を果たし、プリマ・バレリーナの階段を駆け上がっていった。そんな日本のジゼルの上演史に重要な役割を果たしてきた谷桃子バレエ団が、7年ぶりに本作を上演。15日の様子を報告する。

ジゼル:馳 麻弥
檜山 和久&佐藤 麻利香
馳 麻弥&今井 智也
『ジゼル』という作品はしばしば、メインキャストの役作りが作品の解釈を左右するが、谷桃子バレエ団のプロダクションは、物語をどのように描くべきなのかという明確なビジョンがある。例えば一幕冒頭、村の若者たちが農作業に出かけていくのと入れ替わりに、アルブレヒトと従者ウィルフリードが登場する。「村人が出払っているタイミングでやってくるアルブレヒト」という演出は、貴族社会にも、村のコミュニティにも、二幕の精霊の世界にも、どこにも居場所のないアルブレヒトのキャラクターを象徴しているかのようだった。
ジゼルの演技はもとより、ジゼルの母ベルタの立ち振る舞いや、ヒラリオンが吹く角笛の取り扱いなど、細部にもブレがない。一幕の終わりは、アルブレヒトが走り去るシーンを、ヒラリオンとの衝突やベルタの慟哭などと合わせて、一連の流れで捉える。さらにアルブレヒトが朝日に向かって歩いていく二幕のラストは、朝で始まり一巡して夜明けで終わるというタイムラインを、効果的に見せていた。
馳 麻弥&今井 智也
ベルタ:尾本 安代
『谷のジゼル』は作品そのものの生命力が強く、出演するダンサーは作品に負けない存在感が求められる。15日のキャストは、ジゼル、アルブレヒト、ヒラリオン、ミルタに、馳麻弥、今井智也、三木雄馬、山口緋奈子、16日のキャストは、佐藤麻利香、檜山和久、田村幸弘、竹内菜那子が出演した。
クーランド大公:齊藤 拓 バチルド姫:日原 永美子/馳 麻弥
ヒラリオン:田村幸弘