谷桃子バレエ団創立60周年記念公演2
「令嬢ジュリー」

2009.7.5 新国立劇場 中劇場

2of 2
Tani Momoko Ballet
「Miss Julie」

ジュリー: 伊藤範子
 『令嬢ジュリー』では、貴族の娘ジュリーが、同じ階級の婚約者を拒否し、下男ジャンを誘い身をまかせます。ここで2人の関係は逆転、家柄、先祖の重みに負けた彼女は自ら死を選ぶのです。
ジュリー: 伊藤範子&ジュリーの婚約者:岸田隆輔
 コロスを使った象徴的な場もありますが、全体としては装置も衣裳も具象的で物語を細かく運んでいきます。もちろん、古典的なマイムはなく、すべて独特の動きで表現。ジュリーの高部尚子は、初演からの配役、的確な演技、シャープな動きで役をつくりました。ジャンの三木雄馬は歯切れのよいテクニックは抜群、アダージョも頑張りました。しかし内面の表現という点では、後半は大分よくなりましたが、もうすこし工夫が必要。ジャンの愛人朝枝めぐみ、物見高い女瀬田統子がしっかり場をつくっていました。
ジャン: 三木雄馬 ジュリー: 高部尚子
クリスティン(ジャンの許嫁):樋口みのり
クリスティン(ジャンの許嫁):朝枝めぐみ
伊藤範子
伊藤範子&ジャン: リーガン・ゾウ
三木雄馬& 高部尚子
 ともに悲劇で終わるのですが、純愛と背徳、彼女独特の動きに共通性があるとはいえ、象徴性という点でスタイルも異なる2作品で見応えは十分でした。

 主要な役をダブル、トリプル、そして一部の男性を除き2作品に重複させずに団員を分けた配役は、バレエ団の充実度を示すもの。ただ、そのためかやや舞台の厚みに欠けたきらいがあったことはいなめません。この経験が将来に生きることを期待したいと思います。

新国立劇場中ホール2009年7月4日夜所見

舞踊批評家:うらわまこと

伊藤範子
STAFF

芸術監督/谷 桃子
演出・振付/ビルギット・クルベリ
振付指導/ヤチェク・ソレツキ
バレエ・ミストレス/尾本安代、大塚礼子
バレエ・マスター/赤城 圭、平田貴義、岩上 純
美術監修/橋本 潔
照明プラン/ヨラン・ウェトゥラップ
照明/足立 恒(インプレッション)
音響/矢野幸正
舞台監督/福島 章
大道具・小道具製作/ユニ・ワークショップ
衣裳制作/小沢郷子、工房いのや、家本 豊
主催/有限会社谷桃子バレエ団研究所
マネジメント/新演奏家協会

高部尚子