谷桃子バレエ団 創立60周年記念公演2
「ロメオとジュリエット」

2009.7.5 新国立劇場 中劇場

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Tani Momoko Ballet
「Romeo&Juliet」

ジュリエットの母:川原亜也/ジュリエットの父:桝竹眞也 /ジュリエット:佐々木和葉
ロメオ:今井智也&マキューシオ:下島功佐

見応えある2つのクルベリ作品

うらわまこと

 創立60年の谷桃子バレエ団。今年初めから来年にかけて計6回の記念公演を行っています。第2弾の今回は、スエーデン生まれで、世界的な女性振付家ビルギット・クルベリの2作を上演しました。
 わが国には優れた女性振付家は多数おりますが、世界では、とくにバレエ界では、女性振付家はきわめて少ないのです。よく知られているのは、ニジンスキーの妹のニジンスカ、アメリカ初期のアグネス・デ・ミル、最近ではトワイラ・サープぐらいでしょうか。それぞれにきわめて個性的、革新的な作品を作っていますが、そのなかでもクルベリは、1999年に亡くなりましたが、自分でもバレエ団をもって、多くの先駆的な作品を発表しました。
ジュリエット: 永橋あゆみ
永橋あゆみ&ロメオ: 齊藤拓 ティボルト:敖強(AO Qiang)
 今回の2作は、そのなかでもとくに彼女の代表作といってよいもので、谷桃子バレエ団では創立30周年に『ロメオとジュリエット』、40周年に『令嬢ジュリー』をバレエ団初演しました。『令嬢ジュリー』のほうが先に振付けられているのですが、多分作品の知名度や内容からこの上演順になったのではないでしょうか。たしかに、ストリンドベリの原作による『令嬢ジュリー』は背徳的な男女関係を描いた物語で、初演時にも物議をかもしたといわれています。しかし、作品のスタイルとしては、後から作られた『ロメオとジュリエット』のほうが象徴性が高く、より革新的といえます。
ジュリエットの母:日原永美子
ジュリエットの父:桝竹眞也
ティボルト:敖 強       パリス:川島春生
佐々木和葉&今井智也
 谷桃子バレエ団では、この2作の主役をダブルキャストで上演しました。

 まず『ロメオとジュリエット』。ベースとなるのはシェイクスピアの戯曲であり、プロコフィエフの音楽ですが、クルベリは長さを半分ほどにして、1幕にまとめました。装置はなく、衣裳は中世の趣を残しながらも現代的なデザイン、旗と衣裳の色(ダークブルーとレッド)が両家の対立を表しています。

齊藤拓& 永橋あゆみ
 ダンサーはみなバレエシュウズ。クラシックのテクニックも使いますが、現代的なインサイドに入る動き、とくに腕の動きに特徴があり、登場人物の思いやそれぞれの関係がみごとに表現され、物語を的確に伝えます。
マキューシオ:中武啓吾/川島春生/敖 強
 ただ1人白衣裳のジュリエットは永橋あゆみ、ロメオとの出会いから、周囲の反対を押し切っての深い愛、そして行き違いの死までを、体当たりともいえる熱演で表現しました。ロメオの齊藤拓は、落ち着いた動きと表現で、激しいジュリエットの愛をしっかりと受け止めていました。2人をとりまく各役では、ジュリエットを守り、ロメオとの決闘に敗れたティボルトの敖強がしっかりした存在感をみせました。