1of 2 Tani Momoko Ballet 「Les Miserables」
伊地知優子
物語バレエの作家がなかなか出てこない日本にあって、物語に長年取り組んできた作家の蓄積がようやく結果を出し始めた2000年代に入ったあたりから、次々と快作をものにしてきた望月の、これは代表作の一つになりそうだという期待を持った初演でした。
出番の長い場面が多い伊藤ファンティーヌは、まともな若い女、娘を他人に預けて身を売る女、絶望の淵に沈む女、と状況の変化をよく踊り分けながら、それなりの女の魅力を打ち出していたのが印象に残ります。
またコゼットをこき使う強欲なテナルディエ(敖強)と妻(朝枝めぐみ)の庶民の生活感に溢れた巧みな踊りは物語の滑り出しから観客を引き込み、終始臨場感を盛り上げていました。こういう技巧、表現ともに優れた即戦力のヴェテランが何人もいるバレエ団でこそ可能な物語バレエの創作です。