(社)日本バレエ協会公演「ドン・キホーテ」

2005.3.30 東京文化会館大ホール


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Japan Ballet Association
Don Quixote


Strictly Dancing
-ダンスに首ったけ-

林 愛子

 日本全国からベテラン・中堅・若手・新人ダンサーが集結する日本バレエ協 会の公演は、お祭りともいえるような楽しさがある。それがあらゆる踊りに彩 られた陽気で華やかなバレエ『ドン・キホーテ』の全幕となれば、見る楽しみ はいっそう増す。
ドン・キホーテ:桝竹眞也
キトリ:田中ルリ&桝竹眞也
 ゴルスキー版を谷桃子が改訂した同作品は、妹尾河童による美術、緒方規子矩子による衣装が新しくなったこともあり、6年ぶり6度目となる今回はさらに新鮮味も加わった。2005年度都民芸術フェスティバル参加でもある3日間の公演は、プリンシパルだけでなく、ソリスト、キャラクターにもトリプル・キャストが組まれ、田中千賀子バレエ団から参加した田中ルリ(キトリ)とドイツ・ライン・オペラ・バレエ団で活躍中の遅沢佑介(バジル)が初顔合わせをする日を見た。
キトリ:田中ルリ
バジル:遅沢佑介
 プロローグで夢想家のドン・キホーテ(桝竹眞也)が騎士道を実践し、憧れのドゥルシネア姫を救い出す旅にサンチョ・パンサ(岩上純)ととともに出る『ドン・キホーテ』は、第1幕、バルセロナの街の広場からすでに踊りが満載だ。田中はまず伸びやかさと華やかさを、遅沢は練り上げたバレエ・テクニックをアピール、とくに高いリフトなど客席を喜ばせた。このふたりのやりとりだけでなく、キトリの友達ピッキリア(中村明代)とジャネッタ(宮城文)の明るさ、整然とした群舞もいい。
キトリの友達
ジャネッタ:宮城 文&ピッキリア:中村明代
エスパーダ:梶原将仁
大道の踊り子:菊池あやこ
サンチョ・パンサ:岩上 純
 キトリを目当てにやって来る金持ち貴族ガマーシュ(マシモ・アクリ)と、彼に娘を嫁がせようとするキトリの父ロレンツォ(小原孝司)、ドン・キホーテとサンチョ・パンサのコミカルでとぼけた演技、大勢が群がって騒ぐシーンもおなじみとはいえ舞台を盛り上げる。特にアクリのガマーシュのコミカルさには味があって、『眠れる森の美女』のカラボス役と同様に魅力的。こういう役どころを楽しんで演じているベテランを見られるのも、『ドン・キホーテ』のおもしろさのひとつではないか。いくつもの踊りの見せ場では、大道の踊り子(菊地あや子)があでやかに踊ったが、なんといっても闘牛士エスパーダの梶原将仁が、確実なテクニックで男性的ダイナミズムと渋さを見せた。
キトリ:田中ルリ
ガマーシュ:マシモ・アクリ
 第2幕も、踊りの見せどころが多い。その第1場、キトリとバジルが逃げてきて隠れる街の居酒屋では、エスパーダとその恋人メルセデス(小野田奈緒)、ギターを持つ女(大徳隆子)があだっぽいが清潔感の失せない踊りを、ジプシー(山本みさ)が当たり役らしく哀切で熱を帯びた踊りを披露。女性ダンサーたちの魅力が全開するシーンだ。バジルが、キトリを探してやってきた父やガマーシュ、ドン・キホーテの前での狂言自殺は、不自然さを感じさせないテンポと愛嬌とがあるといい。遅沢のバジルはやや生真面目でシャイで、欲をいえばもう少しオーバーなくらいの茶目っ気があるとこの予定調和の場面が盛り上がるのかもしれない。
バジル:遅沢佑介
ギターを持つ女達:鈴木裕子、成舞香織
メルセデス:小野田奈緒
指揮/堤 俊作
演奏/ロイヤル・メトロポリタン管弦楽団

舞台美術/妹尾河童
衣裳/緒方規矩子
照明/梶 孝三
舞台監督/森岡 肇
衣裳コーディネイト/吉田牧子
制作/(社)日本バレエ協会
チーフ・プロデューサー/高田止戈
制作担当
岩田高一、漆原宏樹、岡本佳津子、岸辺光代
ギターを持つ女:大徳隆子