東京シティ・バレエ団「白鳥の湖」

2008.1.19 新国立劇場中劇場


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TOKYO CITY BALLET
「THE SWAN LAKE」

道化:穴吹 淳

山野博大の電脳バレエ横丁徘徊

東京シティ・バレエ団の石田種生版〈白鳥の湖〉を見る

 東京シティ・バレエ団が石田種生さん演出・振付による〈白鳥の湖〉を上演しました。
 石田さんは、松山バレエ団在籍の時代に始まり、これまでに何度も〈白鳥の湖〉の新演出にたずさわってきました。そのたびにいろいろと考え、工夫を重ねてより良いものを作り出そうと努力してきたのだと思います。

パ・ド・トロワ:若林美和、宮田愛子、キム ボヨン
この公演のパンフレットに石田さんは、「〈白鳥の湖〉の生い立ち」「私と〈白鳥の湖〉」「〈白鳥の湖〉の物語」「ボリショイなどロシアの思い出」と4つも文章を書いています。これを読むと、石田さんが〈白鳥の湖〉に対してどんなことを考えてきたかがよくわかります。石田さんは本を何冊も出しているほどのすばらしい文章の書き手なんです。最近も「随想〜バレエに食われる日本人」(文園社刊)というおもしろい本を出しています。

 こんどの〈白鳥の湖〉は、あちこちこまごまと手が入れられていました。しかし全体の流れとしては、プティパ、イワノフ版から大きく外れることはなく、伝統を重んじたものになっていたと思います。

ボルフガング:青田しげる
 もっとも特長があったのは、最後の幕でした。オデットとジークフリート王子との愛の力によって悪魔が滅びる場面です。ここは、二人が死んでしまう悲劇にするか、生きたまま結ばれるハッピーエンドにするか、二つの終わり方があり、演出者の考え方の分かれるところです。そして石田さんはハッピーエンドを選びました。
ジークフリート王子:小林洋壱
小林洋壱&オデット:関本美奈
 ロットバルトと闘った王子が、その翼をもぎとって勝ち、魔法の解けた白鳥たちが人間にもどるところを描いています。しかしそれは結果であって、そこに至るまでに、石田さんは、白鳥たちが力を合わせてオデットをロットバルトの攻撃から何度となく守るシーンを見せています。そしてオデットと王子のパ・ド・ドゥを加えて、愛の力が悪魔に打ち勝ったことをはっきりと示します。ロットバルトの攻撃からオデットを守る白鳥たちのコール・ド・バレエの動きがじつに感動的でした。そういうところがあったので、魔法から解放された白鳥たちの喜びが、意味のあるものとして観客に伝わり、大きな感動を呼んだのです。
四羽の白鳥:信田洋子、井野口恵、依田成美、吉松朱里
三羽の白鳥:齋藤佳奈子、友利知可子、西 希美
関本美奈