2010年スターダンサーズ・バレエ団1月公演
ピーター・ライト版
『 ジ ゼ ル 』全2幕
2010.1.23 ゆうぽうとホール

1of 2
STAR DANCERS BALLET
2010 JAN
「Giselle」

アルブレヒト:イヴァン・プトロフ
ジゼル:白椛祐子

山野博大の電脳バレエ横丁徘徊

 《2010都民芸術フェスティバル》に参加したスターダンサーズ・バレエ団の『ジゼル』を見ました。

 ここのバレエ団はピーター・ライト版の『ジゼル』を1989年以来、上演しています。最近のものとしては、なんといっても吉田都さんが主演した、2003年8月のUNHCR・難民教育基金支援公演のことが思い出されます。この時は、ロバート・テューズリーさんを相手役にジゼルを踊った吉田さんのみごとな演技とライト氏の緻密な演出の良さが、ひときわ強烈な印象を残しました。

 2008年12月2日に、スターダンサーズ・バレエ団の創立者である太刀川瑠璃子氏が81歳で逝去されました。その後をついで総監督の役についた小山久美さんが、次の時代の新しいスターダンサーズ・バレエ団を作ろうと努力しています。その小山さんの時代の『ジゼル』は、みごとにこれまでのピーター・ライト版の良さを踏襲し、そこに若いプリンシパルたちの個性をしっかりとなじませたものとなりました。
バチルド:天木真那美
ヒラリオン:新村純一
パ・ド・シス
小池知子/久保田小百合/長谷川智佳子/大野大輔/佐藤 惟/吉瀬智弘
長谷川智佳子&大野大輔
 ピーター・ライト版『ジゼル』はストーリーの進行に細かいところまで気を配ったところに特長があります。シェークスピアを生んだ演劇王国イギリスのものらしい仕上がりの『ジゼル』というわけです。

 ライト氏は、ジゼルとアルブレヒトという主演の二人の個性を決める時に、まわりの人たちの関係をこと細かく作り上げ、その結果として中心の二人が見えてくるという方法を取っているように私には見えます。ヒラリオン(新村純一さん、24日は橋口晋策さん)とジゼルの母親ベルタ(周防サユルさん)が、とても親しい関係にあることを冒頭のシーンで示しています。

白椛祐子
ウィルフリード:新田知洋
 またアルブレヒトのイヴァン・プトロフさん(24日は福原大介さん)の登場では、いかにもお城から駆けて来たという雰囲気を強調し、従者のウイルフリード(新田知洋さん)が追いついてくるのを待ちます。ウイルフリードが先に出て、その後からアルブレヒトが悠然と登場するというやり方もありますが、恋しいジゼルに早く会いたいというアルブレヒトの心情を示しているのです。お供のウイルフリードが、直情的なアルブレヒトをいささかもてあまし気味だという感じも観客によく伝わってきます。

 また、第1幕のライト氏の演出は、バチルド姫(天木真那美さん)の扱いを変えることで、その地位の高さを示しています。彼女が従者たちと離れてジゼルの家で休むために退場するシーンでは、お供の女性がしっかりとつき従っています。高貴なお姫様ですから、とうぜんそうあってしかるべきなのですが、そこまで細かく配慮する演出は、ライト版の他にはありません。他にもいろいろと細かい演出を積み上げて、全体としてひとつのリアリティーのある世界を創り出しているのです。