札幌舞踊会Xmas公演 バレエ「くるみ割り人形」

2005.12.4 北海道厚生年金会館


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Sapporo Buyoukai
NUTCRACKER

郷 翠/奥山真之介/寺沢里紗
 この一貫性はもちろん第2幕でも続く。通常お菓子の国のディヴェルティスマンとして踊られる各国舞踊はパーティでの踊りとして設定され、クララの家族や客人たちが自慢のダンスを披露する。1幕に登場したダンスグループのメンバーも参加している。

 花のワルツのソロを教師が踊るのも重要ポイント。この花のワルツによって、ステキな女性へのクララの憧れが一層膨らみ、次のグラン・パ・ド・ドゥでの、大人の女性への変身に繋がるのではないだろうか。古典版だと、なぜ突然子供のクララが大人の女性になって王子様とパ・ド・ドゥを踊るのか、なかなか説明がつかないところ。しかし、坂本版では、クララが抱いた憧れの具現化としてきちんと描かれているので、納得がいく。

スペイン:窪田玲子、正木亮羽
長谷川 馨、長原綾子、木村唯子
アラビア:深谷優子
     梅澤由利子、後藤佳奈子、東 秀昭、奥山健恵
中国:本間佳麗、神谷亜里、村越恒介、水野 言
 チャイコフスキーのドラマティックな音楽に乗って、鮮やかなグラン・パ・ド・ドゥを踊ったのは、香港バレエで活躍する藤岡綾子と梁靖。梁はノーブルな物腰と、優しいサポートで藤岡を包み込む。とりわけ上半身の柔らかさがすばらしい。藤岡も凛とした気品を放ち、まさにクララが夢見る理想の大人の女性そのもの。見ごたえあるパ・ド・ドゥで華を添えた。

 ラストシーンは、再びテレビの画面。どうやらステキなレディに成長したクララは、もうひとつの夢も叶えたようだ。
トレパック:山本佳奈、横岡 諒、山中 善、矢部優稀
あし笛:加藤彩花、飯田朝世
 一人ひとりがキャラクターの魅力溢れるダンスで、物語をしっかりと支え奥行きを感じさせる。中でも少女クララを踊った寺沢は大人顔負けの演技力と輪郭のしっかりしたダンスで全編を踊りきり、今後の成長が大いに楽しみ。正木が存在感と華を感じさせたのも嬉しい。フリッツの奥山、ダンスグループの西野隼人の軽やかでフレッシュな動きも印象的だ。
小さな雪の精を踊った子供たちが、チラチラと舞う粉雪を力いっぱい踊りきったのには拍手喝采。全編を通じて子供たちにもかなりしっかりと踊らせる振付である。

 雪の精たちのチュチュが雪の結晶のようなデザインになっていたり、キュートな衣装が多く、視覚的にも楽しめた。また装置は4本の円柱だけとシンプルだが、その分照明の効果も光る。特に第一幕終盤の雪のシーン、濃紺の空に白銀の雪が吹きすさび、一面銀世界に染まっていく様は、雪国札幌ならではのリアルな演出で、実に鮮やかな印象を残した。
奥山真之介&郷 翠
花のワルツ:梶原千佳、川村結愛、石川千咲斗
クララ:藤岡綾子&くるみ割り人形:梁 靖
梁 靖(Liang Jing)
 出演者全員によるカーテンコールはまるでミュージカルのようなエンターテインメント性に満ちたもの。ステージから降ってくるハッピーな気分がキラキラと客席を照らしたのだった。

2005.12.4 北海道厚生年金会館所見

舞踊批評家:もりやま みか

藤岡綾子
STAFF
演出・振付/坂本登喜彦
照明/吉田茂夫
美術/山口賢一
衣裳/井上博子
映像/(有)プリズム
ヘアメイク/古川静江
舞台監督/斉藤 玲
製作/千田雅子 札幌舞踊会