2015 年スターダンサーズ・バレエ団 9 月公演
オール・チューダー・プログラム
2015.9.26&27 テアトロ・ジーリオ・ショウワ

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STAR DANCERS BALLET
ALL TUDOR PROGRAM

Continuo
音楽/ヨハン・パッヘルベル「カノン」
初演/1971年
林 ゆりえ、松本実湖、酒井 優、加地暢文、安西健塁、渡辺大地

山野博大の電脳バレエ横丁徘徊

スターダンサーズ・バレエ団《創立50周年記念・オール・チューダー・プログラム》を見て

 スターダンサーズ・バレエ団の9月公演は《創立50周年記念・オール・チューダー・プログラム》だった。スターダンサーズ・バレエ団は、1965年に太刀川瑠璃子か「スターダンサーズによるアントニー・チューダー特別公演」を行ったことを契機として結成されただけに、その50周年はとうぜんチューダー作品の上演で祝うことになる。しかし50年前に、公演の成果により舞踊ペンクラブ賞特別賞を受賞しながら、財政負担に苦しむことになった太刀川に、チューダーは「もうこういう公演はやらない方がいい」とアドバイスしていたようだ。

リラの園
Jardin aux Lilas
音楽/エルネスト・ショーソン「詩曲」
装置/眞木小太郎
衣裳/ヒュー・スティーブンソン
ヴァイオリン/高木和弘
初演/1936年
 客席には、65年の公演を見た人はもちろんのこと、1954年に太刀川が小牧バレエ団時代に踊った『リラの園』を見ているという人まで、懐かしい顔がずらりとそろっていた。休憩時のロビーは、かつての舞台の印象を声高に語る人たちで大いににぎわった。

 公演は、チューダー62歳の作品『Continuo』からスタート。これは女3人、男3人によるストーリーのない作品だ。パッヘルベルの「カノン」に乗って成熟期に入っていたチューダー独特の動きがしっとりと繰り広げられる佳作だった。

カロライン:島添亮子/その愛人:吉瀬智弘/彼の過去の女:佐藤万里絵
 次は『リラの園』だった。これはショーソンの「詩曲」を使って、27歳のチューダーが創ったものだけに、今見ても新しい感覚の世界を舞台のすみずみにまで広げようと心を砕いた彼のあくなき追求の努力の跡が迫ってきた。日本では小牧バレエ団が1954年に、ノラ・ケイ、小牧正英、太刀川瑠璃子、岩村信雄という配役で最初に上演した。
今回は26日に島添亮子、横内国弘、佐藤万里絵、吉瀬智弘が、27日には、渡辺恭子、山本隆之、永橋あゆみ、今井智也が踊った。適材を他のバレエ団にまで求めて、作品のより良い仕上がりを願った制作者の意欲が感じられける配役だ。私はこの作品の中に込められた人間同士の感情の微妙な交錯を見て、バレエがこんなところまで表現できる芸術なのだということをはじめて知り、半世紀以上も前にバレエ批評を書くことを自身の生活の中心に置いてしまったのだ。
吉瀬智弘/島添亮子/カロラインの婚約者:横内国弘/佐藤万里絵
小さな即興曲
Little Improvisations
音楽/ロベルト・シューマン「子供の情景」
ピアノ/蛭崎あゆみ
初演/1953年
鈴木 優&加地暢文
 『小さな即興曲』は、シューマンの「子供の情景」を使った小品で、窪田希菜、渡辺大地がかわいらしく踊った(26日は鈴木優、加地暢文)。これはチューダー44歳の作品で、日本では65年に上演された。その時は石田広子・佐々保樹、三力谷優子・漆原宏樹のダブルキャストだった。大物ばかりがそろっていたように思いがちだが、当時は彼らもこの作品を踊れるほどに若くかわいらしかったのだ。