3of 3 NBA BALLET CAMPANY 「Dracula」
そして、ミーナの友人ルーシーとドラキュラとのパ・ド・ドゥ。田澤祥子の踊りは女性らしさが強調され、まさにドラキュラに襲われる女性の典型を描いていた。特に二階で血を吸われる場面は、手すりから上向きにこちらに体を投げ出し、吸血鬼に襲われる女性の象徴的なイメージを演じていた。そして、自らも吸血鬼となっていく姿も印象的だ。
ミーナが連れ去られて、他の犠牲者たちが吸血鬼(ゾンビ)となって集まるシーンは、ゾンビ映画やマイケル・ジャクソン『スリラー』を思わせるインパクト。いわゆるコンテンポラリーの脱構築的テクニックでもなく、バレエを基本としながら、床に横たわったり、這ったりもありという、物語に合ったエンターテイメントな動きだ。その中で、強い爆発音に観客みんなが驚く。そして、ジョナサンやヘルシングたちが、ドラキュラの胸に杭を打ち込んで終焉。知っていても、印象的な場面だった。
今回、『ドラキュラ』でNBAバレエ団は、日本のバレエに新たな1ページを刻んだ。これをどう展開するかは、芸術監督久保紘一を中心とした、NBAバレエ団の意欲と、それを支える観客にかかっている。
2014.10.25 ゆうぽうとホール所見
舞踊批評家 志賀信夫
主催:NPO法人 NBAバレエ団