NBAバレエ団公演『HIBARI』
〜全ての美空ひばりファンに捧げる
2015.6.13&14 メルパルク東京
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2of 2
NBA BALLET COMPANY
「HIBARI」
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振り付けたリンは、ブロードウェイで『SWING!』によりトニー賞にノミネートされ、アメリカンバレエシアター、ニューヨークシティバレエなどでも振付を行ってきた。そして、この作品では、特にミュージカルの経験が生かされ、和央の進行で写真と映像を交えながら、ひばりの人生をバレエで綴るという作品になった。
歌と踊りで綴る人生
だれでも知っている『リンゴの歌』がひばりのデビューのエピソードとともに紹介され、『河童ブギウギ』の若い姿も新鮮だった。そして、『リンゴ追分』の女性だけの群舞。次の岡田亜由美・高橋真之ペアの『お前に惚れた』の男女デュオは、当初は歌謡曲の歌詞で踊っていると思ったが、その違和感が次第に消えていくのは不思議だった。
ひばりの曲は、日本舞踊の発表会などで踊られることがあるが、それとは異なり、歌詞の意味を過剰に表現せずに、バレエ特有の動き、テクニックや場面を巧みに織り込んでいる。続くデュオの竹田仁美・宮内浩之の『哀愁波止場』ではさらに違和感が薄れた。
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次の『哀愁出船』では、冒頭に歌謡曲を意識した腰を落としたポーズから始まる群舞を、峰岸千晶を中心に展開したが、その土着っぽい動きは、リンがアルビン・エイリー舞踊団にも振り付けたイメージを彷彿とさせ、見応えがあった。そしてさらに『お祭りマンボ』は、大森康正を中心に男性たちのダイナミックな群舞で舞台を盛り上げた。ところどころに挿入されるひばりのエピソードも、説明的になりすぎず、舞台としっくり絡んでいた |
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やがて、ホリゾントに真っ赤な太陽がゆっくりと昇る映像が映し出され、スローバラード風に始まる『真っ赤な太陽』は、赤い衣装の男女が絡み、そしてアップテンポになると五人によるリズミカルな群舞にへと展開する。ライブの舞台のためのアレンジだが、そこから途中のグループサウンズの編曲に入っていくと盛り上がり、筆者はノスタルジーを抱いた。
さらにスクリーンがいくつも舞台に登場し、そこに巨大な美空ひばりの姿。羽をまとった派手な衣装は東京ドームのライブで、その映像とともに踊る女性6人の群舞。この映像のダイナミズムは圧倒的で、ひばりの存在感を見せつけた。
そして黒い衣装で踊られる『悲しい酒』は、関口祐美と男性2人によって、黒い布を使ったモダンダンス的な構成で、曲ともしっかり合っている。リンが一番好きな曲というだけあって、力の入った見応えのある振付と構成だった。さらに、和央ゆうかの歌う『愛燦燦』は大森康正と田澤祥子のデュオで、踊りをしっかり見せて魅力的だった。
最後は、出演者たちがそれぞれの衣装で登場する締めくくりの『人生一路』。そしてカーテンコールに『川の流れのように』が流れると、スタンディング・オベーションをおくる観客で一杯になった。
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関口祐美/清水勇志レイ/土橋冬夢
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成功の意味
観客にはおそらく多くのひばりファン、そして宝塚ファンもいたろうし、それが公演の成功の大きな原因だったことは想像に難くない。しかし、美空ひばりの歌謡曲という、当初バレエとは相容れないと思われた楽曲を、魅力的なミュージカル・バレエとして仕上げたリン・テイラー・コーベットの手腕は見事である。おそらく再演を繰り返しても、広い観客を獲得できるのではないか。それは、通常バレエに対して敷居の高さを感じている観客にも、バレエの魅力を伝えるきっかけになるかもしれない。そして筆者のように、ひばりと新たに出会ったような思いを抱いた観客も少なくないに違いない。
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大森康正&田澤祥子
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ひばりの曲をつないで流れる音楽はマイケル・モーリッツ、見事な映像デザインはアダム・ラーセン、衣装はクリチーナ・ジャニーニと、ブロードウェイで活躍するアーティストの技術と感性がこの作品をしっかり支えていた。 |
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『A Little Love』
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三船元維&峰岸千晶
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この作品の前に、マーチィン・フリードマンの振付による『A Little Love』が上演された。これは黒人ヴォーカル、ニーナ・シモンの曲によって作られた作品で、田澤祥子と泊陽平、竹田仁美と大森康正、竹内碧と森田維央の3組のペアが完成されたテクニックでしっかり見せるもの、その巧みさと安定感のある踊りに見入った。ただ、筆者にはニーナ・シモンには、よりブルージーな曲の印象が強く、それを感じさせたのは『Everything must change』のみで、他の曲はオーケストレーションなどで聴きやすいものとなっており、ちょっと上品すぎかという印象も残った。だが、この2作は歌とバレエという組合せのさまざまな可能性を感じさせた。 |
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竹内碧&高橋真之
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日本のバレエの歴史を見ると、創作バレエが多い時代があり、さまざまな日本人振付家が創作にチャレンジした。しかし、海外のバレエ団が多く来日し、古典を見る機会が増えるうち、バレエといえば古典バレエという上演が、現在では大半となっている。
そのなかで、このような新作の上演は貴重である。そして日本の文化とバレエをつなぐ一つの道でもあるかもしれない。前述したように、これによってひばりファン、宝塚ファンがバレエに足を運ぶこともある。おそらく、私たちは固定観念にとらわれすぎている。この作品は、「美空ひばりでバレエ?」という疑問をいい意味で裏切った、バレエ界における新しい挑戦として、高く評価したい。
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浅井杏里&&土橋冬夢 峰岸千晶&三船元維& 竹内碧&高橋真之
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STAFF
芸術監督・演出/久保紘一
振付/リン・テイラー・コーベット(「HIBARI」)
マーティン・フリードマン(「A Little Love」)
バレエミストレス /野田美礼
作曲/マイケル・モリッツ(「HIBARI」)
舞台監督/千葉翔太郎
衣裳デザイン・製作/クリスチーナ・ジャニーニ(「HIBARI」)
衣裳製作/アンジェリックチャーム、小林理香(「A Little Love」)
映像プラン/アダム・ラーセン(「HIBARI」)
照明プラン・照明/TOMATO JUICE DESIGN(株)オー、山本高久
音響プラン・音響/相馬保之
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