NBAバレエ団公演『HIBARI』
〜全ての美空ひばりファンに捧げる
2015.6.13&14 メルパルク東京
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1of 2
NBA BALLET COMPANY
「HIBARI」
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浅井杏里、土田明日香、米津 萌、李 民愛
三原未来、平居郁乃、柳沢綾乃、宮川真保
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スタンディング・オベーション
日本のバレエ団の公演で、これほどにも多くの観客が立ち上がるスタンディング・オベーションは、初めての体験だった。そして筆者自身も、周囲の熱狂とともに、ある種の感情の高まりの中にいた。そして同時に一つの疑問がわいた。それは、「これは音楽の力なのではないか」ということだ。
これは、「美空ひばりの歌と生涯」をバレエ作品としたものだ。そして全編にわたって、美空ひばりの歌や曲が流れる。実は音楽というものは、だれにでも同じように響くものではない。自分の中に埋め込まれた、聴いていたときの記憶や状況が大きく作用する。
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実は筆者は歌謡曲や演歌は必ずしも好きではない。小学生のころには、まずグループサウンズにはまった。そして音楽について人と話をすると、同じ曲でも世代によって感じ方が明らかに違う。美空ひばりの曲は、ある時期にはテレビやラジオから繰り返し流れており、聴くともなく聴いていた。グループサウンズ後期にブルーコメッツを従えた『真っ赤な太陽』は、ポップスとは言い難いこぶしが少々入った歌い方、いい歳に真っ赤なミニスカートなど、子どもながらに違和感を感じつつも、当時、熱心に歌ったものだった。
本来の「ひばりファン」というのは、おそらく昭和一桁から団塊世代までだろう。しかし、後期の『愛燦燦』は小椋佳の作詞・作曲、『川の流れのように』は秋元康の作詞という当時のヒットメーカーの曲として、現在の20〜50代も親しんでいる。いろんな意味で、やはり、国民的大歌手の筆頭にあげるべき存在だ。
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岡田亜弓&高橋真之
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今回の舞台では、イントロが流れただけで拍手が起こる。もちろんバレエに関心がなく、ひばりファンだからという観客もいるだろうが、重なっている人も多いだろう。いずれせよ、「美空ひばり」という存在と歌、曲の記憶がこの舞台を支えている。 |
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竹田仁美&宮内浩之
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他方、例えば『春の祭典』を見ればわかるように、バレエでも音楽とともに感動するというのは、しばしば体験することである。『春の祭典』の音楽も初演当時はブーイングの山だったというし、初めて聴いて感動するとは限らず、それからの記憶や刷り込みが影響している。そのため、冒頭に書いた「音楽の力ゆえ」という疑問は必ずしも正確ではない。それでは、この作品では、音楽が強く、バレエが弱いのだろうか。いや、けっしてそうではない。 |
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三船元維&峰岸千晶
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ひばりと出会う
この作品のきっかけは、昨年、このNBAバレエ団で『ガチョーク賛歌』を振り付けた米国のリン・テイラー・コーベットが、日本のホテルでひばりのドキュメンタリーを見たことだという。
リンは、まずその歌声と雰囲気に惹かれ、さらにひばりを追悼して多くの人が泣いている場面で「「J.F.ケネディのような偉い政治家が亡くなったのか」」と思った。そして見ているうちに、アレサ・フランクリンやジュディ・ガーランドのような、日本にとって国民的大歌手であると知った。そこでNBAバレエ団の芸術監督久保紘一に制作を提案したら、「あなたに外の視点で振り付けてほしい」といわれた。それからひばりの曲を聴き続け、英訳の歌詞を読み、ひばり記念館などのゆかりの場所も訪れ、この作品が生まれたという。
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和央ようか
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竹内碧/貫渡竹暁/河野崇仁/清水勇志レイ/土橋冬夢
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NBAバレエ団は、これまでも多くのチャレンジ的作品を世に問うてきた。昨年、久保は『ドラキュラ』で、振付にマイケル・ピンク、主役に大貫勇輔を起用し、プロジェクション・マッピングを駆使して、新しい楽しい舞台を作り出した。それが評価されて、久保は文化庁芸術祭新人賞を受賞している。だが、今回はなんと美空ひばり。それを聞いたときに、驚きと違和感は否めなかった。特に理由もなく「ピアフならわかるが」とも思って見て、感動し、納得した。
初めに古い『悲しき口笛』の映像が流れ、その下に同じシルクハットに男装の女性ダンサーたち8人が、映像と同じ動きから踊り始めるが、次第にオリジナルの踊りなっていく。これ以降は、ひばりの映像は最も効果的と思える場面のみで、踊り自体を極力しっかり見せる構成である。舞台の進行とナレーションは元宝塚宙組のトップスター、和央ようか。名前を知る程度だが、数曲歌う声もひばりの声と違和感がなく、かつ上手く、さすがの存在感で適役だった。
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