?バレエ・リュス100周年記念
「NEO BALLET × ニジンスキー」
〜千夜一夜 夢のプリンシパル・ガラ〜

2009.9.21 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

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NEO BALLET

「牧神の午後」
振付/西島千博
中村 誠

吉田悠樹彦の
Driving into Eternity
バレエ・リュス100周年記念

『NEO BALLET×ニジンスキー』〜千夜一夜 夢のプリンシパル・ガラ〜 今年はバレエ・リュスから100周年に当たる。丁度100年前の1909年5月18日にパリ、シャトレ座でバレエ・リュス公演が行われ“ロシア・シーズン”として鮮烈なデビューを飾った。この公演でスターになったニジンスキーは20世紀バレエ史の中で最も重要なバレエダンサーの一人だ。その歴史を記念してNEO BALLETプロジェクトはガラ公演を行った。様々なバレエ団のプリンシパルや多くのスターダンサーが競演することでも注目を浴びた。バレエ・リュスは劇場付属のバレエ団ではなくロシア貴族のディアギレフによって率いられたプライベートなバレエ団という当時は斬新な存在だった。今日踊った所属カンパニーを超えた26人の姿に通じるものもあるかもしれない。
「眠れる森の美女 第三幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
振付/西島千博
上山千奈、邵 智羽
「バラード」
振付/橋口晋策
白糀祐子、橋口晋策
 注目したのは田中ルリと佐々木大による「ジゼル 第二幕よりパ・ド・ドゥ」。幻想的なジゼルとアルブレヒトを実力あるダンサーの二人が踊った。充実した演技と二人のパートナーシップが素晴らしいイリュージョンを生みだした。清楚で美しい田中の踊りは定評があり、そのファンは東京にも多い。佐々木は優れたダンス・ノーブルだが力強い野生も内に秘めているアーティストだ。この作品はロマンティック・バレエの代表作だが、パリでは久しく上演が途絶えていた。長い間ロシアで踊り続けれていたものをこのバレエ団のニジンスキーとカルサヴィナが踊ることでパリ・オペラ座で再び踊られるようになった。そんなエピソードを彷彿とさせるような二人の姿は未だに一世紀も経とうとしていないその時代へと見るものを誘っていく。

加えて「『シェラザード』よりグラン・アダージオ」のポピュラーな酒井はなと西島という時代をきってきた才能たちによる共演に客席は沸いた。フォーキンが振付けリムスキー=コルサコフによる音楽の魅力が発揮された現代でも代表的な演目である。異国情緒を感じさせる酒井の風貌と西島の華やかさが東洋的な情景を躍動する肉体から刻みだした。男女の肉体の間に生まれてくる距離と官能が舞台いっぱいに広がった。

「ライモンダ 第三幕よりグラン・パ・クラシック」
改訂振付/西島千博
西田佑子、横関雄一郎、愛智伸江、猪俣陽子、小野真理子、津田康子、染谷野委、竹田 純、長澤風海、土方一生
横関雄一郎
西田佑子
「白鳥の湖 第二幕よりグラン・アダージオ」
改訂振付/西島千博
橘 るみ、西島千博
新世紀のバレエを切り拓いていく新鋭舞踊手たちならではのエネルギー溢れる踊りはいずれも見ごたえがあった。「『白鳥の湖』第三幕より黒鳥のグラン・パ・ド・デゥ」ではKバレエで活躍する松岡梨絵と橋本直樹が踊った。女の妖艶な魔性とそれに惹かれる王子を描いた二人の踊りと演技力は熊川哲也による振付によるこの名シーンを力強く描きだした。経験を重ねることで社会に大きく羽ばたいて欲しい二人である。

さらに「ライモンダ 第三幕よりグラン・パ・クラシック」では西田佑子と横関雄一郎が活躍をみせた。西田は第40回舞踊批評家協会新人賞を受賞するなど確かな技術と表現力から定評があるバレリーナである。クラシックにメインをおいていることもその大きな特色だ。技術に対する率直な姿勢が完成度の高い表現を導くことを可能にしている。対する横関は現代作品でも活躍を重ねてきた意欲的な男性ダンサーだ。二人の底流に流れる古典と現代は1909年に「競宴」というディヴェルティスマンに含まれていた様々な作品の1シーンを彷彿とさせるものがあった。

「くるみ割り人形 第二幕よりグラン・パ・ド・ドゥ」
振付/マリウス・プティパ
渡部美咲、福岡雄大
「白鳥の湖 第三幕より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」
振付/熊川哲也
松岡梨絵、橋本直樹
「火の鳥よりファイナル・パ・ド・ドゥ」
振付/西島千博
児玉麗奈、中島 周
音楽が語る神秘と不滅の生命の象徴の力強さを踊るダンサーの魅力と見事に重ねてみせたのが児玉麗奈と中島周による「『火の鳥』よりファイナル・パ・ド・デゥ」だ。バレエ・リュス最初のオリジナルな作品でありストラヴィンスキーのパリでの作曲家デビューとなったことでも知られている。児玉の誰にでも愛される朗らかで可憐な表情と中村のシャープな男の魅力は見るものを日常生活の中で忘れがちなファンタジーの中へいざなう。彼ら彼女たちはいずれも注目したい才能たちといえよう。
「薔薇の精」
監修/薄井憲二
鈴木美波、秋元康臣
「瀕死の白鳥」
改訂振付/西島千博
柴田有紀
「シェエラザードより グラン・アダージオ」
振付/西島千博
酒井はな、西島千博
 また、人気のあるダンサーも数多く出演し、橘るみは西島を相手に「『白鳥の湖』第二幕よりグラン・アダージオ」でキャラクター性から盛り上げていたし、渡部美咲と福岡雄大は「くるみ割り人形 第二幕よりグラン・パ・ド・デゥ」でファンから喝采を浴びていた。
STAFF

構成・演出・振付/西島千博
振付/松崎えり、青木尚哉、遠藤康行(マルセイユバレエ団)
照明/足立 恒
舞台監督/佐川明紀
主催/(株)A&H JAPAN、(財)埼玉県芸術文化振興財団
企画制作/(株)A&H JAPAN、
特別監修“薔薇の精”/薄井憲二