静岡市民文化会館30周年記念「ドン・キホーテ」全幕

2008.2.3 静岡市民文化会館大ホール


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「Don Quixote」

エンバー・ウィリス&エレーナ・エフセーエワ
 2人の仲を父親に反対されてキトリとバジルが逃げ込んだ「ジプシーの露営地」の見ものは「ジプシー娘」のソロ。望月由弥は愛らしく少し妖しい雰囲気の中に「生きているやるせなさ」を織り込む踊りで見せ場を作った。
ジプシー:望月由弥
夢の女王:原あゆ美
 場は「キホーテの夢」に移行する。まずピンクの衣装姿の22人の「妖精たち」が立ち並んで上品な風景を形成する。かわいいキューピッドが進行役になって……3人のヴァリエーションが披露される。夢の女王(原あゆ美)愛の妖精(松下明日実)は過不足ない。ドルシネア(E・エフセーエワ)は派手さに変わりはないがしなやかに踊った……。
愛の妖精:松下明日実
愛の妖精:松下明日実 ドルシネア姫: エレーナ・エフセーエワ 夢の女王:原あゆ美
カルメンシータ:八島友美
正木亮羽
メルセデス:森川里子
 休憩を挟んで第2幕……「酒場・タブラオ」は多彩な構成である。第1幕では“おとなしい存在”だったキトリの友人・那須野芽生と山本杏が元気に明るく踊る。メルセデス(森川里子)、カルメンシータ(八島友美)、セギディーリアの女達など出演者を総動員して賑やかな「場」となった。裾を引く衣装・バタデコーラで踊った「ギターを持つ女」(森田暁朱香・十河くらら)が印象に残った。
 バジルが狂言自殺する場面??観客が楽しそうに笑っていた……。
 そして「キトリとバジルの結婚式」??。ボレロ・石川菜摘が知的に踊り、ファンダンゴも上品……。「アムール」の6人と「アントレ」6人はバレエ団のホープ候補生なのだろう。確かなテクニックでグラン・パ・ド・ドゥ前に群舞の見せ場を作った。

 グラン・パ・ド・ドゥが始まる。E・エフセーエワは俊足のシェネ(鎖状の回転移動)と気迫を込めた回転技グラン・フェッテで客席をわかせた……。彼女は最初から最後まで“超派手”であった……。第1ヴァリエーション・秋山千加子は華麗、第2・飯塚絵莉は知性があふれてナチュラルであった……。

ボレロ:石川菜摘、三船元維
ファンダンゴ:前田晶子、伊東恵美、敖 強、長清 智
バリエーション第1:秋山千加子
バリエーション第2:飯塚絵莉
 キホーテとサンチョが次の旅に出掛ける場面で幕を下ろした。楽しい『ドン・キホーテ』であった。振付・演出は前田香絵・前田藤絵、監修はアナトリー・シードロフ、音楽監督・指揮は福田一雄、演奏は静岡フィルハーモニー管弦楽団。

2008.2.3 静岡市民文化会館大ホール所見

てらむら・さとし=舞踊ジャーナリスト

前田藤絵/前田香絵/アナトリー・シードロフ
STAFF

構成・演出/前田香絵、前田藤絵
監修/アナトリー・シードロフ
音楽監督・指揮/福田一雄
演奏/静岡フィルハーモニー管弦楽団

主催
前田バレエ団、静岡フィルハーモニー管弦楽団
静岡市民文化会館、静岡市文化振興財団
舞台監督/川原卓也
照明/梶ライティングデザイン・(株)アス
舞台装置/ユニ・ワークショップ、(株)アス
衣裳/前田バレエ団、谷桃子バレエ団、アトリエヨシノ
企画・制作/前田バレエ団