岸辺バレエスタジオ第19回発表会

2006.8.30 メルパルクホール


2of 2

Kishibe Ballet Studio

「NUTELLA」
音楽/J.バッハ ほか
振付/キミホ・ハルバート
 第4部の二つの作品「NUTELLA」「Beneath the Moon」は短い暗転を挟んで継続されました。前半が女性のみ15人、後半が男女6組のカップルです。継続することで見えて来たテーマがあります。

ゲネプロ時、2階席から撮影しながら、なんだか突き放されているような 冷たさを感じていました。洗濯物が日常と社会の境界線を示すなら、孤独vs仲間との友情が主題なのでしょうか? 下半身にまとっていたものがユニフォームだとすると仕事着を脱ぐことによって社会の束縛から逃れようとしているようにも思えたのです。

「Beneath the Moon」
音楽/MONO ほか
振付/キミホ・ハルバート
 暗転後、主人公らしき女性が「花がきれいに咲きましたね」と誰かに言われて眼前に咲き誇る春に気づかされ、思わず「何を見ていたのだろう」とつぶやきました。

その言葉はそのまま私たちへの問いかけに変わります。毎日なにげなく目の前を通り過ぎる事柄が、けっして偶然ではなく必然の積み重ねなのだと気づいたとたん目の前のダンスが、男性の力を借りてアクロバティックなダンスを見せていたはずが逆に女性が男性を操っているように見えてきました。

 さらに不思議なことにかぶりつきで撮影した時にゲネプロの印象が見事に反転しました。裸電球が一軒一軒の家庭をイメージさせ、その下にはそれぞれ若い夫婦がいます。どーんどーんと鼓動のようなリズム音がそれに重なり私の少年時代、停電や台風の時に家族全員がひとつのろうそくを囲んだ夜を思いだし、なぜか涙が出てきました。私も年をとったのでしょうか。

タイトル「Beneath the Moon」がすべてが平等な社会を意味するのなら、キミホ・ハルバートさんが訴えたかったのは家族愛に他なりません。社会を形成するもっとも小さなユニットというべき家族を愛し、自らのダンスグループをユニット・キミホと名付け活動しているのもそこに意味があるように思いました。来年3月のユニット・キミホ旗揚げ公演(世田谷パブリックシアター)です。ぜひ観届けなければなりません。

06.8.30 メルパルクホール所見

写真・文:ダンス・スクエア_鈴木紳司

STAFF
振付・指導/岸辺光代、照屋真由子、キミホ・ハルバート
舞台監督/堀尾由紀
照明デザイン/足立 恒(インプレッション)
音響/三輪あみか
装置・大道具/ユニ・ワークショップ