劇的舞踊集団Kyu
第三回公演
「灰かぶり姫 」

2011.4.16 日本橋劇場

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劇的舞踊集団Kyu
第三回公演
「灰かぶり姫 」

演出・振付の上田遥は古きよき時代のジャズやオールディーズを使い優れた持ち味と独特の美意識を披露した。課題があるとすれば、トータルに舞台美術や衣装を中心に演出を加えながら、大人と子ども両方を対象にした“わかりやすい切り口”という取り組みにさらにアートダンスとしての深みを与えていくことだ。
パーカッション:タツル
奇しくも関東大震災後に復興をしていく東京では浅草を中心に大衆文化が盛り上がり幅の広い世代を対象にした芸能が繰り広げられた。踊りもステージのみならず演劇・映画など接点を持ちながら幅広く展開をみせエノケン(榎本健一)が在籍し川端康成が小説に描いたというカジノ・フォーリー、新宿にあったムーラン・ルージュなどが知られている。この時代には欧米から戦前の踊りに限らず優れたジャズ文化がレコードや映画、雑誌書籍などを通じてもたらせた。アートダンスとエンターテイメントがバランスよく共存をしていた側面もある。出演しているダンサーたちは今後もそれぞれのジャンル、多くのステージで活躍をしているわけなのだが、彼らの活動ともリンクをさせながら、オリジナルな地平を模索していくことが重要だ。
 グローバル化でさらなる情報化で時代が大きく変わりシーンの流れが2000年代よりさらに早くなってきている。日本も2000年代と大きく時代が変わる転換期にある。“嬉しさ”も“悲しさ”も人の心の光も闇も情報過剰で行き過ぎた描写がマスメディアに溢れていた10年前とまた変わってきている。バブル崩壊後の不況の中とはいえ“豊穣”で、“病的”で、“過剰”と“狂乱”の中にあった時代、から大きく転換してきている。再び素朴でハートウォーミングなものに回帰してきているようだ。新時代の語り口が求められるが、上田の新たな方向性も気になるところだ。

日本橋劇場 4月16日ソワレ所見

舞踊批評家 よしだ ゆきひこ

堀内 充
堀内 充&橘 るみ
中村友里子&高谷大一
STAFF

演出・振付・台本:上田 遙

音楽:坂出雅海
照明:間中涼帆
衣装:宮村 泉
音響:宮下 章
舞台監督:田中英世
監修:西川箕乃助

制作:蔭山けい子・小玉隆司

シンデレラ:橘 るみ