(社)日本バレエ協会
第49回 バレエ・フェスティバル

2010.11.12 メルパルクホール

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JAPAN BALLET ASSOCIATION
BALLET FESTIVAL


篠原 聖一作品
「カルメン」

カルメン:下村由理恵
 篠原聖一さんの『カルメン』は、2008年12月の篠原聖一バレエリサイタルで、下村由理恵さんの主演で初演されたものの再演です。

 篠原さんはダンスール・ノーブルとしての長いキャリアを経て舞踊作家へと転身しました。《バレエ・フェスティバル》では、1995年の第34回に『クリスタル』を発表し、次世代振付者の代表格としての新鮮さをアピールした実績を持っています。

佐々木 大&運命:篠原 聖一
 篠原さんの『カルメン』は、カルメン役の下村由理恵さん、ホセ役の佐々木大さん、スニーガ役の森田健太郎さん、エスカミリオ役の沖潮隆之さんという主要な役柄にからんでくる群舞の扱いに特色があります。たくみに群舞を使い分けて、奔放なカルメンの生き方を描きます。
ドン・ホセ:佐々木 大
 作品の冒頭は、建築の足場に布を張ったようにも見える舞台美術の前に「運命」の役の人物が立っているというシーンです。カルメンをはじめとする登場人物のすべては、この「運命」にその人生を左右されるということを暗示しているわけです。「運命」を演じているのは、篠原さんご本人。当然のことながら舞台は振付者の思い通りに進行するのです。
スニーガ:森田健太郎
佐々木大/下村由理恵/森田健太郎
エスカミリオ:沖潮 隆之
 主要な役のダンサーそれぞれに特徴的な動きを配し、各場面の群舞の状況に応じて変化する動きと対峙させるという、彼の振付はとてもよく考えられたもので、一も二もなく納得させられてしまいます。士官のスニーガに言い寄るカルメン、彼を逮捕したホセに色仕掛けで迫り縄を解かせるカルメン、人気者のエスカミリオに近づくカルメン、嫉妬に狂ったホセに刺されて命を落とすカルメンと、下村由理恵さんは「とらわれない女」をひとつひとつていねいに演じます。
沖潮 隆之&下村由理恵
 そして最後は、刺されたはずのカルメンが一山の薔薇の花びらに変わり、彼女自身は肉体の束縛を脱して、次の冒険へと走り去って行くのです。篠原版『カルメン』は2008年の初演の時よりもずっとまとまりが良くなり、細部まで彼の考えが行き届いていたと思います。
 どうやら日本バレエ界に強力な牽引者が現れたようです。

2010年11月12日メルパルクホール所見

やまの・はくだい=舞踊評論家

STAFF
照   明:足立 恒
音   響:矢野 幸正
舞台監督:堀尾 由紀
装置制作:ユニ・ワークショップ

制作:(社)日本バレエ協会
漆原宏樹 /篠原聖一/ヒゴ マサヒロ

下村 由理恵&佐々木 大