公益社団法人日本バレエ協会公演
アレクサンドル・ゴルスキー版
「白鳥の湖」全幕

2013.3.15〜16 東京文化会館・大ホール

2of 3
Japan Ballet Association Presents
Alexsander Gorsky Vertion
Swan Lake

 芝居面ではたとえば第1幕、王子の座る部分(椅子)がなく、王子は皆と踊るとそのまま袖に消え、また踊りの場になると現れます。つまり、王子の前で皆が踊るというシーンがないのです。また王子と王妃の芝居、「遊んでいないで結婚を考えなさい」というマイム、それ以外も含め、マイム全体にもう一つ心理の伝わり難さがあります。もちろんこれは出演者の問題ではありません、作品がそうなっているのです。

 このなかで、ボリショイらしさというか、そのイメージを強く感じさせたのは、終幕の王子とロートバルトの闘い、王子に羽をもぎ取られたロートバルトがのたうちながら死にいたる場面でした。そしてハッピーエンドがロシア(旧ソ連)の定番。

瀬島 五月&奥村 康祐
 今回の公演は3日間、主役とソリストクラスがトリプルキャスト。2日目を取り上げます。

 オデット/オディールは瀬島五月、神戸の貞松・浜田バレエ団のプリンシパル。王子は奥村康祐、大阪の地主薫バレエ団から新国立劇場へ、現在ソリスト。ともに文化庁芸術祭の新人賞を、瀬島は本年中川鋭之助賞を受賞した、新鋭といっても経験豊富な2人。ただ、同じ関西でも組んで踊るのは初めて。

 ちなみに他の日は、エレーナ・エフセーエワ/ミハイル・シヴァコフ(初日)、酒井はな/厚地康雄(3日目)、日本人健闘でした。

 瀬島は独特の表現力をもつスケールの大きいダンサー、第2幕オデットではやや緊張も見えましたが、抒情性を意識した表現、動き。第3幕オディールでは、その強烈さと繊細さを兼ね備えた演技が全開。袖への引っ込みも堂々として、まさにプリマの風格。

 奥村はどちらかというとナイーヴな雰囲気をもつダンスールノーブルですが、しっかりと王子役をつとめ、技術的にも安定感を増し、強い個性の瀬島のパートナーとしてきっちり役割を果たしました。

小さな白鳥 :中野亜矢子/星野姫/高橋静香/綾野友美
 ロートバルトは鈴木裕、長身、柔らかい身体で、第2幕の序曲部分を目一杯踊り、最後の死の演技もきちんとみせました。大活躍の道化は土方一生、最初はやや微笑ましい張り切り過ぎ、しかし高い跳躍と回転、軽妙な雰囲気で全体としてよくこの役をつとめました。第1幕のパ・ド・トロワは清水あゆみ、星野姫と浅田良和。女性陣も力を見せにくい振りをよくこなし、浅田は見事なスタイル、端正で高い技術で大きな見せ場をつくりました。
 小さな白鳥:大矢野柚子/木下 真希/中野亜矢子/東 葉子
大きな白鳥:秋満 彩子/小川 友梨/粕谷 麻美
 第1幕の群舞、2、4幕の白鳥たち、ディヴェルティスマンなども、オーディションで集まり、毎日役が変わるなか、男女とも多少力の差はありそうですが、みな精一杯踊り、舞台に活気を加えていました。
 
3月16日 東京文化会館大ホール所見

舞踊批評家 うらわまこと

大きな白鳥:清水あゆみ/田村 彌奈 /南部 美和
道 化:土方 一生