公益社団法人日本バレエ協会公演
アレクサンドル・ゴルスキー版
「白鳥の湖」全幕

2013.3.15〜16 東京文化会館・大ホール

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Japan Ballet Association Presents
Alexsander Gorsky Vertion
Swan Lake


ゴルスキー版「白鳥の湖」を復元上演、
出演者もしっかり演じる

うらわまこと

 長い歴史をもつ古典バレエでは、その間いろいろな振付者が、原作に対して独自の解釈で新しく演出・振付することがよくあります。そのなかでそれがひとつのスタンダードとなって、他のバレエ団など、広く長く上演され続けるものがあります。それらは一般に振付者の名前、あるいはその所属した劇場の名前を付して「〜〜版」といわれます。
道化 :染谷 野委
 「白鳥の湖」でいえば、原作はプティパ/イワーノフですが、初演後120年近くなる今日までいろいろな版が生まれました。そのなかでもっとも有名なのはセルゲーエフ版(キーロフ版)でしょう。コンクールなどではブルメイステル版(ダンチェンコ版)の黒鳥のヴァリエーションが踊られることもあります。
 このたび、日本バレエ協会ではゴルスキー版(ボリショイ版)の「白鳥の湖」を復元、新制作しました。これは、アレクサンドル・A・ゴルスキーが1901年に初演、その後改訂し20年に確立したものを、24年彼の死後、いろいろな振付者が手を加えながら1975年までボリショイ劇場で上演されてきたものです。ちなみに、日本では、敗戦の翌年(1946年)に小牧正英が上海バレエ・ルッスから持ち帰り、東京バレエ団で上演した版がひとつのスタンダードとなっており、また、英国のテリー・ウエストモーランド版も牧阿佐美バレヱ団が上演していました。

 日本バレエ協会では、このような優れた版を日本に紹介することもひとつの役割としており、セルゲーエフ版「白鳥の湖」も、すでに20年ほど前、いち早く上演しています。

パ・ド・トロワ:瀧 愛美 /酒井 大/平尾 麻実
パ・ド・トロワ:星野 姫/浅田 良和/清水あゆみ
 セルゲーエフ版は本人がご存命中で直接指導されましたから、移植、新制作はそれほど難しくなかったと思われます。それに対し、ゴルスキー版は上記したように、ご本人は大分前に亡くなっており、その後もメッセレルなどいろいろと他人の手が加わっています。したがって、それを完全に復元するのは至難の技。今回はベラルーシ国立ミンスク・ボリショイ・オペラ・バレエ劇場の芸術監督などを務めたワレンチン・N・エリザリエフに委託しました。
 このように困難な、しかし意味ある仕事は、公益法人である日本バレエ協会の存在意義を高める重要なものだと思います。
家庭教師:江藤 勝巳
 では、ゴルスキー版とはどのようなものなのでしょうか。ゴルスキーというと「ドン・キホーテ」が良く知られ、踊りはもちろんですが、ドラマ、芝居の面にもいろいろ工夫があるという定評がありました。

 ところが今回は、率直にいってドラマより踊りにぐんとウェイトがかかっているように感じられました。たとえば第1幕、多数のダンサーが登場、とくに彼が新設した道化は舞台を縦横に動き回り、多彩で高度なテクニックを披露、観客を楽しませます。道化は第3幕でも最初のソロだけでなく、ディヴェルティスマンの前にジャンプや回転をみせるのです。

ジークフリード:奥村 康祐
 さらにそれぞれの幕の終わった後、とくに第2幕、第3幕では最終幕と同じように主役はじめ全員が登場して客席に挨拶します。これは確かにダンサーたちへの親近感を増すと思いますが、ドラマ的にはややとぎれます。20世紀初頭のボリショイ劇場ではこのような習慣があったのでしょうか。
オデット:瀬島 五月
ロットバルト:藤野 暢央