2of 3 JAPAN BALLET ASSOCIATION 「Don Quixote」
闘牛士エスパーダと踊り子メルセデス(田中ルリ)が、キトリとバジルのごく親しい友達として各幕に登場する演出も、エリザリエフ版ならでは。エスパーダ役には、今村泰典という適材を得た。 膝裏が伸びきらないといった技術面の課題もあったが、舞台映えする容姿に加えて、芝居っ気も申し分ない。キザな闘牛士になりきって、舞台を盛り上げた。
配役表を見たところ、新国立劇場登録ダンサーの泊陽平やKバレエカンパニー団員だった石黒善大等の名前を発見。準主役級にしろ群舞にしろ、出演者にうってつけの人材を得ると、舞台はがぜん、見応えを増す。関西出身者と日本の主力カンパニーで鍛えられたダンサーの底力を見たようだった。
やがて野営地にドン・キホーテとサンチョ・パンサが到着、ロマの男女が踊りを披露するものの、ドン・キホーテを憤慨させる人形劇はカット、キホーテ公が風車に巻き上げられ、落下する場面もカット。彼が風車に向かって槍を投げるや、足元がおぼつかなくなって失神、彼の夢のなかで森の妖精達が乱舞する幻想シーンに転じる。この場面転換の直前、キューピッドとドルシネア姫が中幕の奥に現れてキホーテ公を彼方に誘う、プロローグと同じ光景が繰り返される。 劇中劇ならぬ、夢中夢として森の場面を位置づけているわけだ。