井上バレエ団7月公演
オーギュスト・ブルノンヴィル の世界


2014.7.19 文京シビックホール 大ホール

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The Inoue Ballet Foundation
The World of August Bournonville

「コンセルヴァトワール」

振付/オーギュスト・ブルノンヴィル
田川裕梨/ウルリク・ビルキエール/源 小織
ヴィクトリーヌ:田川裕梨&バレエマスター:ウルリク・ビルキエール
エリザ:源 小織

山野博大の電脳バレエ横丁徘徊

 井上バレエ団7月公演が、ブルノンヴィル版の『ラ・シルフィード』とやはりブルノンヴィルが振付けた『コンセルヴァトワール』というロマンティック・バレエの2作品により行われた。昨年、財団設立30周年とバレエ団45周年を祝って『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』と、チャイコフスキーの三大バレエを上演した井上バレエ団が、こんどは創立者の井上博文が生前、日本のバレエ人としては初めてデンマーク・バレエ界との交流を実現したことを思い出させる演目を選択した。
「ラ・シルフィード」

振付/オーギュスト・ブルノンヴィル
 『ラ・シルフィード』というバレエは、1832年にフィリッポ・タリオーニの振付によりパリ・オペラ座で初演され、マリー・タリオーニの軽やかな跳躍で評判になった。しかし別の作曲者の音楽を使った『ラ・シルフィード』がもうひとつデンマークで作られ、1936年に初演されていたのだ。それを振付けたのはオーギュスト・ブルノンヴィルだった。パリ・オペラ座の『ラ・シルフィード』はいつの間にか上演されなくなってしまうのだが、ブルノンヴィル版の方はデンマーク・ロイヤル・バレエ団のレパートリーにずっと残り、絶えることなく上演され続けている。
エマニュエル・ティボー& 宮嵜万央里
魔女マッジ:エヴァ・クロボーグ& グエン:ヨン・アレッックス・フランソン
ヨン・アレッックス・フランソン
 井上バレエ団は、1999年からブルノンヴィル版『ラ・シルフィード』に取り組んできた。その最近の上演は2011年7月のことで、フランク・アンダーソンとエヴァ・クロボーグの再振付により、ゲドラン・ボイエセンのラ・シルフィード、エマニュエル・ティボーのジェィムス、田川裕梨と西川知佳子のダブル・キャストによるエフィー、エヴァ・クロボーグのマッジ、クリストファー・リカートのグエンが踊り、デンマーク版の真髄を日本の観客にたっぷりと示した。
 3年後の今回は、フランク・アンダーソンの再振付により、宮嵜万央理と田中りなのダブル・キャストによるラ・シルフィード、エマニュエル・ティボーのジェィムス、西川知佳子と越智ふじののダブル・キャストによるエフィー、ヨン・アクセル・フランソンのグエン、エヴァ・クロボーグのマッジという配役での上演だった。タイトル・ロールを日本人バレリーナが踊るところが何よりの見どころだ。
アンナ:横山美樹 /エフィー:西川知佳子
 幕が上がると、そこは農家の居間。暖炉の前の椅子でジェイムスが居眠りしている。その横に白い衣裳のラ・シルフィードの姿が。大柄のティボーに対して小柄な宮嵜万央理がとてもかわいらしく見える。この妖精の出現がジェイムスにとっては不幸のはじまりというわけだ。魔女のマッジを演ずるクロボーグが、ジェイムスとエフィーの婚約のお祝いにやって来て、集まった娘たちの将来を占ったりしている。そのマッジをジェイムスは追い出そうとする。このささいな出来事が、彼の人生を大きく狂わせることになる。