オーロラバレエ2018 公演「ジゼル」全幕
2018.8.23 かめありリリオホール

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Aurora Ballet 2018
Giselle

ミルタ:園田萌絵
ドゥ・ウィリー:十川麻衣子、植村あゆみ
ミルタが静かなアラベスクパンシェで登場、怒りを心に秘めているのかその静けさが逆に怖い!軍隊で言えばミルタが将軍でドゥ・ウィリーが鬼軍曹なのですが、オーロラバレエではどちらもクールビューティ戦略のようです。

ミルタの支配する世界の概要・権力をたっぷり示してから、ジゼルは新たな精霊として迎えられます。「白鳥の湖」ならば白と黒とで観客の目にもはっきりとその違いが分かるのですが、1幕のジゼルは人間として、2幕は精霊として“明”と“暗”のコントラストを演じ分けなければいけません。青春を謳歌している少女とは反対に、感情を表に出さず行動もミルタに管理された世界での感情表現は、目線と背中のラインで決まると言って良いでしょう。


罠にかかった小動物のように着実に追い詰められ、逃げ場がなくなる哀れな男たち。二人同時にではなく一人づつ楽しむようにゆっくりと死が近づいているのを知りながら、それでも踊り続け許しを請わなければならないアルブレヒト。それを救おうとする精霊となったジゼルの静かで慈愛を秘めた目が印象的でした。
ヒラリオン:泊 陽平
浅田良和 / 平尾麻実 / 園田萌絵
クライマックスは24人のウィリーたちでした。結婚の夢叶わず亡霊として「男の裏切りを許すまじ!」の死の行進は迫力満点、20年通っている生徒さんもいるとのことですが、かぶりつきで見ていてその迫力に震えが来るほど。 
上手⇔下手移動の《アラベスク・タン・ルヴェ》いつ果てるともないパの連続が大きな感動を呼び、会場の拍手はしばらく鳴り止みませんでした。
ジゼル:平尾麻実
アルブレヒト:浅田良和
もちろんヒラリオンが沼地に落とされる場面も、アルブレヒトが踊り殺されそうになる場面も怖いのですが、女性が強い意志を持ち集団で行動するほど恐ろしいものはありません。許しを請うヒラリオンとアルブレヒトに、縦一列で将棋倒しのような間髪を入れず継続する「Non!」のアームスは、逃げ出したくなるほど美しく残酷でした。

バレエスタジオで「ジゼル」全幕を上演することは、ただでさえ稀なのですからどれだけ稽古を重ねたことでしょう。群舞を踊ったウィリーたちに大きな拍手を送ります。

2018.8.23 かめありリリオホール所感

写真・文 鈴木紳司

STAFF

演出・構成・振付/大川由紀子、谷みきこ
特別講師/ 平尾麻実、大川敬子
舞台/中央舞台