オーロラバレエ2018 公演「ジゼル」全幕
2018.8.23 かめありリリオホール

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Aurora Ballet 2018
Giselle

ベルタ:大川由紀子& ヒラリオン:泊 陽平
ジゼル:平尾麻実
アルブレヒト:浅田良和&平尾麻実

Photographer's Eye

芸術作品の真価は歳月の波がきびしくふるいにかけ、真の評価を決定づけ。歳月の波に洗いぬかれてなお燦然と真価を輝かすものだけが真の芸術である。古典となりえる作品だけが真の芸術なのである。 瀬戸内寂聴「わたしの樋口一葉」より


「ジゼル」は1841年にパリのオペラ座で初演されて以来、世界各地で上演されている古典バレエの代表的名作です。バレエダンサーなら一度は踊りたいと夢に見る「ジゼル」という古典。何がダンサーの魂を揺さぶるのでしょうか。

大川由紀子さんが主宰の「オーロラバレエ公演」を取材しました。

ジゼル:平尾麻実
アルブレヒト:浅田良和
ヒラリオン:泊陽平

タイトルロールを踊る平尾麻実さんは、《下村由理恵バレエアンサンブル》所属ですので、200回以上踊ったという由理恵さんの“感情がほとばしるようなジゼル”から何を感じ、どんな音の取り方や感情表現を見せてくれるのでしょう。

クールランド公:松岡 宏    バチルド姫:春風まこ
テーマ曲が聞こえてくるだけで胸が高鳴り、ジゼルとアルブレヒトがどんなロマンスを見せてくれるのか、ヒラリオンは野卑なタイプかそれとも純朴なタイプなのかワクワクしながら緞帳が上がるのを待ちます。

広場に息せき切って駆け込んでくるアルブレヒト、恋人に会うのが待ちきれず従者を振り切っての登場なので息も弾んでいます。今をときめくノーブルダンサーの登場に拍手が巻き起こります。

ペザントの踊り: 廣瀬 陽 &荒木麻美
平尾ジゼルは純情可憐で恋人の誘いにはイヤと言えないタイプ、浅田アルブレヒトはそれに乗じて多少強引でも恋を成就させようとクールな性格に思えます。

アチチュード・ソッテでの登場時は、恋人に会える嬉しさを身体いっぱいに表現していたのに、背中合わせの出会いは目を合わせようともせず乙女心を表現、恋人同士がやっと目を合わせたのは、お祭りのキスゲームでした。恋人の手から逃れるのも心の動きやときめきが感じられ、決められた演出の“お約束”ではない初々しい少女がそこにいました。
春風まこ/平尾麻実/浅田良和
やがて訪れる悲劇を予感させるのは花占いではなくヒラリオン:泊陽平さんの重い足取りです。彼は純粋にジゼルを愛し、「騙されちゃいけない」とアルブレヒトの素性を暴こうとします。それが逆にジゼルを追い詰め死に至らせるのですが、知る由もありません。善意からの行動がお城の貴族まで巻き込んだ大騒動になった、動揺・不安が遠くからでも(独自のマイムも加え)きちんと伝わり舞台を引き締めました。
平尾麻実 / 浅田良和 / 泊 陽平
母親役ベルタを大川由紀子さんが熱演、それまで優しく娘の恋を見守る母親だったのに、ラストのアルブレヒトを突き飛ばす様は強烈でした。そういえば「彼が恋人よ」とジゼルから紹介されることもなく、既成事実として認めさせられた感がありました。(笑)