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左右木健一・くみバレエスクール
10周年記念ガラ公演 2007.9.30 イズミティ21大ホール |
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乙戸 沙織
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茂木 恵一郎
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東京駅から東北新幹線で最短1時間40分、杜の都、仙台に到着した。お目当ては、仙台市内で左右木健一・くみ夫妻が主宰するバレエスクールの、10周年記念ガラ公演の鑑賞。伊達政宗が興した仙台藩のお膝元ならではの名所旧跡(と、ふんだんにある美食処)は迂回して、会場のイズミティ21大ホールに向かう。地下鉄に揺られること10数分、最寄り駅の泉中央駅周辺は、サッカー競技場(2002年の日韓共催ワールドカップの際、決勝リーグに進出した日本がトルコに負けを喫した試合の会場)やショッピングセンター、区役所等の大型施設がが立ち並ぶ、いわゆるニュータウン風に大規模開発された一帯らしく、なかなかの人出。仙台出身の友人が「里帰りする度に仙台は拡張している」と言っていたのを思い出しつつ、会場へと歩を進めた。
そして、定員1450人の大ホールで「左右木健一・くみバレエスクール10周年記念ガラ公演」が開幕した。プログラムは、100名を超すスクール在校生と東京、ドイツ等から参集したゲストが踊る大小11作品、所要時間3時間半におよぶ盛りだくさんの内容だ。そのなかから、左右木健一の振付・演出作品とゲスト(*を付記)が踊る現代作品を中心にレポートをしてみたい(2007年9月30日所見)。 |
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佐藤 結花&横関 雄一郎
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◇『デフィレ』(音楽:メンデルスゾーン、振付:左右木健一、出演:スクール生徒110名とゲストダンサー) パリ・オペラ座バレエ団の名物演目としてつとに有名な『デフィレ(=行進、行列の意)』とはまた味わいの異なる、左右木バージョン。オープニングでステージに勢揃いした生徒達のお披露目をした後は、彼らが小グループに分かれて入退場する毎にゲスト1名が現れては観客席に向かって歩み出る、という趣向になっている。演出自体は単純でも、大勢の子供達がステージを埋め尽くしては素早く退けるタイミングが小気味良く、なかなかの見応え。また、ゲスト達が歩く場面は、ダンサー個々人の技量やリズム感、さらには存在感や演技力までをも露にしてしまうのが、すごいところ。神経の行き届いた、メリハリのある足運びで他を圧倒したのは、酒井はな*。息づかいすらドラマチックな、プリマの貫禄だった。 ◇『フラワーガーデン』(振付:左右木くみ、音楽:シュトラウスI世、出演:幼児科生徒) ◇『愛の喜び』(音楽:クライスラー、振付:左右木健一、出演:乙戸沙織) ◇『ドン・キホーテ』第3幕よりバジルのヴァリエーション(出演:茂木恵一郎*) ◇『ラ・シルフィード』第2幕よりパ・ド・ドゥ(音楽:レーヴェンスギョルド、振付:ブルノンヴィル、出演:佐藤結花、横関雄一郎*) ◇『パキータ』(音楽:ミンクス、振付:プティパ、改訂振付:左右木健一、出演:金子亜佑美、福原大介*、スクール在校生) |
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金子 亜佑美
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福原 大介
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酒井 はな
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◇『ロミオへのメロローグ<独白>』[英題は、Lyricism-monologue to Romeo](音楽:ベルリオーズ、振付:後藤早知子、出演:酒井はな*)
1994年に酒井はなのために振り付けられ、久方ぶりに再演されたソロ作品。ジュリエットに扮した酒井が、限られたステップを最大限に増幅させてジュリエットの心情を演じあげる。全身を覆っていたマントと仮面を脱ぎさって初々しいジュリエットに変身したかと思うと、死の刹那、激しく揺れ動く胸の内を吐露。瞬時に役柄に同化し、役柄の心模様を体現することのできる、酒井はなの渾身の演技を得てこそ成立する作品である。 |
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大平 夏維
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◇『古典交響曲』(音楽:プロコフィエフ、振付:左右木健一、出演:スクール在校生101名) 前述の『デフィレ』に続いて、振付家・左右木健一の手腕を示す快作。腕を動かす、あるいは脚を差し出すといった、シンプルきわまりない動きから始まって、やがて舞台映えのするフレーズへと発展させていく展開が実に面白い。照明と振付を連動させた、静と動、緩と急の切り替えも効果的。まだ足元のおぼつかない幼児からトゥシューズで自由闊達に踊る上級生まで、千差万別の習熟度も個性のうちとばかりに、各自、できることを楽し気に、度胸たっぷりに踊る姿勢も頼もしい。子供達の長所を伸びやかに引き出していく演出に好感を持った。 舞台経験の浅い年少者達の優劣については言及しないつもりで稿を起こしたが、藤里拓巳くんにだけはヒトコト。あどけないやんちゃ坊主の風貌で、それほど屈強な筋肉の持ち主には見えないのに、片脚をサイドに上げたまま、するすると連続で旋回したり、ぴょんぴょんと身軽にジャンプをしながら舞台を一周。何をやっても朗らかで自然、細部に未完成な部分があっても、踊る心意気は十分! ダンスの醍醐味は物理的な跳躍の高さや回転数ではなく、踊りが生み出すイメージの豊かさだということを再認識した次第だ。 |
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横関 雄一郎&佐渡 眞歩
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◇『天地創造より アダムとイヴ』(音楽:ハイドン、振付:ウヴェ・ショルツ、出演:佐渡眞歩、横関雄一郎*) 1985年、芸術監督を務めていたチュ−リヒ・バレエで同作を発表したショルツ(1958〜2004)は、6年後にライプツィヒ・バレエに移籍し、夭逝するまでの15年間にわたって芸術監督を務めている。ライプツィヒの元団員である横関にとっての同作は、古巣のボスが振り付けた、いわば履歴書に相当する作品だ。アダム役にうってつけのロマンチックな雰囲気としなやかな踊りもさることながら、横関の踊りがパートナーとの会話になっていることに魅了された。イヴと手に手をとって踊っていても、一歩離れて彼女を見つめていても、つねにそこに二人の繋がりを感じることができるのだ。 |
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竹島 由美子&ラファエル・クメス=マルケ
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◇『オン・ザ・ネイチャー・オブ・デライト』(音楽:マックス・リヒター、振付:デービッド・ドーソン、衣裳デザイン・製作:竹島由美子、出演:竹島由美子*、ラファエル・クメス=マルケ*)
ドレスデン・バレエ専属振付家のドーソンによる新作デュオを、同じくドレスデンに在籍する竹島とクメス=マルケが踊った。2008年に同団で初演予定のドーソン版『ジゼル』の習作の、一回限りのお披露目とのこと。といっても、女性を高々と持ち上げたり、フロアをスライドさせたりといった変幻自在のデュエットで構成されており、古典バレエの味わいは皆無。生身の男女が触れ合い、ぶつかり合うデュエットでなくては描き得ない世界の奥深さと力強さに圧倒された。竹島の研ぎすまされた動きの巧さ、ラファエルのパートナリングの巧さもまた圧倒的。これがヨーロッパ・バレエの第一線なのかと、思わず唸ってしまう。 |
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関 野乃花&左右木 茉琳
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◇『クララの夢〜くるみ割り人形より』(音楽:チャイコフスキー、原振付:イワーノフ、ワイノーネン、改訂振付:左右木健一、「キャンディー・ボンボン」振付:左右木くみ) 眠りについたクララ(左右木茉琳)が夢のなかで雪の国とお菓子の国を訪れる、という手短な古典演目でも、左右木演出の手際の良さが光った。 その一例が、上級者達を選りすぐったとおぼしき、雪の精達の群舞。元気いっぱいに舞台を駆け抜けるスピード感は、成年ダンサーが踊る全幕版でもなかなかお目にかかれないもの。お菓子の国のキャラクターダンスでは、出演者の技量に合わせて振付に修正を加え、無理のない踊りに仕上げられていた。 全編のクライマックスとなったのは、酒井はな*と福原大介*が踊る金平糖の精のパ・ド・ドゥ。艶やかなオーラを発しながら、危なげなく美技を披露する酒井は、成熟したバレリーナそのもの。福原のなだらかに連なる連続ジャンプも見事。主役としての任務をきっちり果たした。 |
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福原 大介& 佐渡 眞歩
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かくして無事に幕を閉じた、長丁場の公演。この日の左右木は振付家であるだけでなく、生徒達の指導、ガラ公演の芸術監督、演出、製作、広報を一手に引き受ける奮闘ぶり。おそらくはファンドレイジングや共催各社との渉外にも関与したのだろうと想像する。地方はもとより、東京周辺でもバレエスクール主体の公演を見る機会をほとんど持たない筆者は、日本全国に点在しているに違いない、数多の熱血指導者の熱血指導を垣間見た気分になった。ロシアやヨーロッパの名門老舗バレエ学校に相当するプロダンサー養成機関を持たない日本とはいえ、各地に点在するこれらの「点」がつながって「線」になり、さらには「面」になっていった時、どんな躍進が可能になるのだろうか等々、想像をたくましくしつつ帰途についたのだった。
ダンス評論家 うえのふさこ |
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福原 大介&酒井 はな
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