ルジマトフ 藤間蘭黄 岩田守弘
 日本舞踊&バレエ「出会い〜信長NOBUNAGA〜」

直前レポート 
15/10/07 岩田バレエスタジオ
幕開き、琴が大きく鳴り響き、紗幕が静かに上がるようです。なぜか琴曲が情熱的なフラメンコギターのように聞こえてきます。まるでアンプのようにルジマトフの体内で増幅されているようです。能でよく見る床を踏み鳴らす所作「足拍子」がルジマトフから出る迫力はすさまじいものです。信長を演じるのに彼以上の適役がないことをその瞬間に確信しました
織田信長をルジマトフが演じるのは承知していました。その衣裳は大きく3回変わります。私の解釈ですが、合戦装束、裃をアレンジしたもの、本能寺での死装束と戦国時代を駆け抜けた信長を象徴するものばかりです。
狂言回し(もしくは古来の萬歳)に見える“振り”で岩田守弘さんが登場。
信長の足を捧げ持つような仕草で草履取りのシーンと理解、秀吉の役だと判明しました。

その明るくひょうきんな性格は“人たらし” の面目躍如です。小柄ながらもボリショイ・バレエで高く評価されたジャンプ力・演技力を縦横無尽に発揮して舞台狭しと踊り廻ります。なんだかシェイクスピアに登場する道化師役を見ているようで迫り来る悲劇をも予感させました。

難解だったのが次の場面、藤間蘭黄さんと信長:ルジマトフが出会うシーンです。手を差し出した信長に扇を渡し、その扇を手に持ち悠然と踊るのですが何の場面なのか全くわかりません。

ストーリーが進み、蘭黄さんが信長に往復ビンタ、さらに足蹴にされた場面で明智光秀と解釈しましたが、ほぼ対等の戦国武士とは....。なんと斎藤道三でした。一人二役なのです。あの扇は濃姫を意味するのでしょうか、それとも信長が好んで舞った「人間五十年 下天のうちを....。」敦盛の一節なのでしょうか? 奥深い演出です。

バレエの振付は守弘さんが、日本舞踊は蘭黄さんが振りつけたと聞きましたが、違和感を覚えることはありません。

この踊りに限ってのことなのでしょうか。蘭黄さん演じる光秀の日本舞踊特有の内股は気になりませんでした。むしろターン・アウトに近いようにさえ見えました。確かに足運びは踵から着地しますが、和楽器の調べに乗ってその美しいこと。琴、鼓、太鼓、笛、の奏でるリズムを体感し、それに身を委ねることがこの舞台を楽しむ作法なのでしょう。

ことに蘭黄さんのジャンプの迫力には驚かされました。ソッテやグランジュッテのような横移動の跳躍ではありませんが、まっすぐ上に飛ぶ様は決してそれに負けません。

さらに本番では足立 恒さんの照明プランが加わります。どのような演出効果を生むのか、今から胸が踊ります。

写真・文 鈴木紳司

敦盛より
人間五十年
下天のうちを比ぶれば
夢幻のごとくなり
ひとたび生を得て
滅せぬもののあるべきか

じんかんごじゅうねん
げてんのうちをくらぶれば
ゆめまぼろしのごとくなり
ひとたびしょうをえて
めっせぬもののあるべきか
ルジマトフ 藤間蘭黄 岩田守弘 日本舞踊&バレエ「出会い〜信長NOBUNAGA〜」
2015/10/11(日)18:00開演 10/12(月・祝)14:00開演 10/12(月・祝)19:00開演
国立劇場 小劇場 (東京都・半蔵門)

 ファルフ・ルジマトフ(元マリインスキーバレエ/プリンシパル
           ミハイロフスキー劇場バレエ<旧レニングラード国立バレエ>芸術監督
 藤間蘭黄(日本舞踊家/藤間流)
 岩田守弘(元ボリショイ・バレエソリスト、ロシア国立バレエ団/芸術監督)

 S席12,000円 A席8,000円 (株)ロシアンアーツ 03-5919-1051