1o2 A New Translation Of Roppongi Kingyo 「TOWA」
「六本木に金魚を見る」
六本木の金魚といえば、ショークラブの老舗。1994年創業で昨年25周年を迎えた。場所は六本木の交差点からロアビル方向、ミッドタウンとは反対に向かった左の一本裏。赤いゴージャスな劇場のロビーから二階に上がると、劇場内部全体も赤く、まさに金魚の中に入るかのようだ。
劇場内部の座席は階段状で、中の二階にも観客席がある、つまり三階四階分以上の吹き抜けの高い構造で、幅は十数メートルだが、二階席が左右まで取り巻く、ミニオペラハウスのような本格的な劇場構造だ。実は昭和期までは、こういった二階にも左右に観客席がある「馬蹄形」といわれる構造の大きいキャバレー、クラブがたくさんあったらしい。以前に新宿にあったカフェドパリもそういう構造だった。ただ、通常のショークラブは客席が平面が普通だが、この金魚は客席も階段状で、まさにショーをしっかり見せるための劇場となっているのだ。だが観客席というだけでなく、食事が楽しめるようなテーブルが設えられており、酒、食事、ショーを同時に満喫できる。
実は加賀谷香が振り付けているということで、見ることになったのだ。加賀谷は周知のように、パパ・タラフマラやHアール・カオスの舞台にも出演した、モダンからコンテンポラリーで活躍するダンサー、振付家だ。
秋田出身で藤井信子、川村泉に学び、アルヴィン・エイリーのダンサーに師事、東京新聞の全国舞踊コンクールなどで賞をとり、コンテポラリーの舞台にも数多く出て、近年は江口隆哉賞、日本ダンスフォーラム賞も受賞している。同時に、このショークラブ金魚でも20年、振付を担当している。本人もエレガンスと鋭さを兼ね備えたダンサーであり、新国立劇場の公演でも振り付ける現役バリバリの踊り手だ。
舞台はマイケル・ジャクソンの『ビート・イット』(カバー曲)により、鏡獅子姿の11人が踊るインパクトのある場面で観客をつかむところから、音楽とダンスがあれよあれよと展開する。60分に30景はあったのではないか、と思わせるほど息をつかせない。それもハードあり、エレガントあり、エロスあり、忍者あり。登場する女性たちも美しい。
1人際だって背の高い美女はニューハーフと目測した。ところが終わって、9人登場した女性のうち4人はニューハーフと聞いて、それにも驚いた。もっとも可憐な美少女に見えた子もそうだったとはーー。