Professional Dancer's Association
Performance Collection Vol.4 
ZERO

2014.5.28&29 Bunkamuraシアターコクーン

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 PDA

ZERO


男性だけのバレエ、
その魅力をよく発揮したPDA公演 ZERO

うらわ まこと


Thread

曲/プロコフィエフ
ポール・サイモン

演出・振付/篠原聖一

秋定信哉、岡田兼宜、佐々木大、末原雅広、末松大輔、塚本士朗、豊永太優
長谷川元志、古川 満、牧村直紀、山本庸督
 最近は男性も少しづつ増えてはきましたが、バレエは見る人も踊る人も女性が圧倒的に多い芸術です。
 しかし、他の分野と比べるとこれは少し珍しい。どういうことかというと、女性には男性ファン(AKBのように)、男性には女性ファン(たとえばスマップ。歌舞伎もそう)がつくのです。つまり、ファンを増やし公演回数を増やすには、バレエ界でも男性が女性を意識して、その魅力をアピールすることが必要になります。もちろん海外のバレエ界では多くの男性ダンサーが女性ファンを引きつけていますし、日本でも熊川哲也など、女性に絶大な人気をもつダンサーはいますが、まだ十分とはいえません。
末原雅広
佐々木大&末原雅広
 こういったなかで、トップレベルの男性ダンサーの集団が生まれました。樫野隆幸が会長のPDA(プロフェッショナル・ダンサーズ・アソシエーション)です。男性だけのグループは前にもありましたし、現在でもコンテンポラリーやショウダンスの分野にはありますが、これほど本格的なバレエダンサーの集団は初めてといっていいでしょう。

 4年前に関西のトップダンサーたちを主体に大阪でスタート。関西は男性ダンサーの宝庫で、東京で活躍しているものも少なくありませんが、まだまだ優れたダンサーがたくさんいます。最初は公演に女性ゲストも招いていたのですが、今は男性のみ、会員も名古屋方面を加え増加、30名近くになっています。
長谷川元志
 そのPDAが今回東京に進出しました。作品も男性のもつ特性と魅力を十分発揮できるように、実力ある振付者に委嘱、好評をえて東京進出に踏み切ったのでしょう。

 作品は3つ。東京中心に広く全国で活躍している篠原聖一、現在神戸女学院大学教授で海外経験も長い島崎徹。そして山本隆之はじめ多くの男性ダンサーを育て、振付にも独特の才能を示している大阪の矢上恵子の3人で、昨年と同じ顔触れ。

 篠原聖一は『Thread』。男性のかっこよさ、バレエの美しさを意識してきた彼には珍しく、出演者は汚れ役で、コミカルな味を持った作品。登場するのはみな猿。髪型やメイクも凝っており、動きも上体を揺らし、ガニ股で腰を落として動き回るモンキースタイル。その集団のなかに上から異端の猿(佐々木大)が降りてきて、一騒動ありながら加わる。そしてまた上に戻るという物語。
長谷川元志/末原雅広/佐々木大
 湯浴みの場では猿たちが手ぬぐいを頭にのせたり、女っぽい猿(長谷川元志)に言い寄り、花よりバナナが選ばれたりと、楽しさには事欠きません。もちろん、佐々木、そして集団のリーダー末原雅広はじめテクニシャンばかり、踊りも十分に見せます。

 音楽はマリンバのミニマル調で始まるポール・サイモン、緩急自在のプロコフィエフのピアノコンチェルトで場の雰囲気を作り、ダンサーたちもよくそれに乗っていました。

 タイトル(糸)からも芥川龍之介の『蜘蛛の糸』によっていることが分かりますが、ここではあまり深い意味を追求するより、仕草やダンスの面白さに重点をおかれており、公演の意図からは成功でした。