2006都民芸術フェスティバル助成公演
(社)日本バレエ協会公演
「白鳥の湖」〜全4幕〜

2006.2.28 東京文化会館


2of 2

JAPAN BALLET ASSOCIATION
Swan Lake

王妃:尾本安代&李 波
各国の姫
大浦妙子、奥田花純、金田洋子、キミホ・ハルバート、宮澤芽実、大長亜希子
 もう一つ振付面でそうしないのが不思議だった、第3幕の黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥのコーダでオディールの32回のフェッテ・アントウルナンの後に王子の16回のア・ラ・スゴンドのピルエットを続けたこと。形の上でも、盛り上がりの面でもこうでなければいけません。初日の下村・李組ではこれで観客も大いに沸きました。
 ところが2日目の島田・齊藤組ではこれをやめてもとに戻ってしまいました。これでは舞台は盛り上がりません、事実客席もシーン、どうしたのでしょう。

 その他マイムを省略していた第2、4幕でも、マイムで意味を明確にしようという意図が感じられました。まだ十分とは言えませんが、望ましい方向での改訂です。
 その他、ここはどうかなという部分もなくはありませんが、踊りさえあればという演出から、ドラマ性を重視する方向への変化は歓迎すべきです。

下村由理恵&沖潮隆之
スペインの踊り:児玉麗奈、山本みさ、増田真也、村山 亮
ナポリの踊り:中野亜矢子、倉谷武史
石田恵美、黒木七海、高杉彩子、谷 みきこ、横山絵美、渡邊 桂
中野亜矢子&倉谷武史
 出演者については、何といってもオデット/オディールの下村由理恵です。踊りを超えた役作り、つまり2役の演じ分け、そして舞台全体を鼓舞する意思と存在感は抜群です。李波もノーブルな姿態、雰囲気でよく王子らしさを出していました。
 その点、島田・齊藤組は技術的には遜色ないしスタイルも悪くないのですが、初日とくらべると先にあげたような面ではまだ若く、これからの研鑽に期待したいところです。
 ダンサーとしては、道化の長瀬伸也が見事な回転と跳躍で場をさらいました。とくに初日は完璧。その裏で目立たないようですが、彼は芝居もなかなかのものです。
チャルダッシュ:安藤明代、山田秀明
 第1幕のパ・ド・トロアではそれぞれ楽しめましたが、女性は動きのスムースさで初日の西田佑子、キミホ・ハルバートに一日の長があり、とくに西田は主役を踊っていた力を見せました。

 第2幕の小さな4羽の白鳥は2日目のほうが整然さでやや上だったようです。第3幕の民族舞踊では、舞台を十分に使っていないところがあり少々気になりましたが、各日スペインやナポリの踊りがとくにはつらつとしていました。コール・ド・バレエは過去には寄せ集めの欠点が現れたこともありましたが、今回は各場面とも訓練のあとが見えました。

マズルカ
荒木祥知、荒井千絵、竹内祥世、本田愛理、木村英樹、柴田英悟、鈴木 裕、中村一哉
 演技面ではまず悪魔ロートバルト。初日は沖潮隆之、2日目は梶原将仁。それぞれ背も高く全体としてはよく役を果たしたと思いますが、第2幕の最初の出では、もう少し不気味さというか、地域の支配者としての存在の強さが欲しいところでした。

 王妃の尾本安代は貫禄で見せましたが、家庭教師の坂本憲志にはもう少し演技のきめ細やかさがあってもよかったのではないでしょうか。

 作品全体としては、先に述べた演出の方向、そして出演者は多少の優劣がありますが、みなあるレベルには達しており、最近では見応えのあるものとなっていました。

2006年2月28日、3月1日東京文化会館所見

うらわ・まこと=舞踊批評家

李 波
2/28(火) 3/1(土) 3/2(木)
オデット/オディール 下村由理恵 島田衣子 岩田唯起子
王子ジークフリード 李波 齋藤 拓 法村圭緒
悪魔ロートバルト 沖潮隆之 梶原将仁 佐藤崇有貴
道化 長瀬伸也 恵谷彰 長瀬伸也
下村由理恵
STAFF
音楽/ピョートル・チャイコフスキー
原振付/マリウス・プティパ、レフ・イワノフ
改訂振付/コンスタンチン・セルゲイエフ
再々改訂振付・演出/橋浦 勇

指揮/堤 俊作
演奏/ロイヤル・メトロポリタン管弦楽団


芸術監督/谷 桃子
バレエ・マスター/篠原聖一
バレエ・ミストレス/八代清子、大塚礼子、早川博子

チーフ・プロデューサー/高田止戈
制作担当/岡本佳津子、岸辺光代、岩田高一、遠藤展弘、金田和洋

美術/牧野良三
衣裳/緒方規矩子
照明/沢田祐二
舞台照明/森岡 肇
装置/東宝舞台(株)
制作/(社)日本バレエ協会
清水美由紀
松田 彩