第17回J・B・Aヤング・バレエ・フェスティバル

2006.3.24 ゆうぽうと


2of 3

Japan Ballet Association
Young Ballet Festival

「White as Snow, As Red as an Apple」
音楽:ARVO PART, SYLVAIN CHAUVEAU, PHILIP GLASS 他
振付:キミホ・ハルバート
バレエミストレス/菊池あやこ、森田真希
 コンテンポラリーではキミホ・ハルバートによる「White as Snow, As Red as an Apple」だ。ハルバートはバレエ振付家を父に持つベルギー生まれのイギリス人だ。ファンタジーに着想を得た作品を上演した。闇の中から女(ハルバート)が現れる。緑の中へ崩れ落ちるこの女をあたかも慈しむように男(佐藤洋介)が腕の中に抱きしめる。と、倒れているハルバートの傍らに赤い踊り手達が表れる。明るい楽曲に感情を織り込むように彼女達は舞う。
森田真希
菊池あやこ/森田真希
野上典之/泊 陽平/桑原文生
キミホ・ハルバート
菊池あやこ&桑原文生
赤とは生命力を現すようであり同時に死も象徴的に現す宗教的な色合いである。白い冬の風景と紅色の踊り手達が対照的な作品だ。床に横たわるハルバートに対して、まるで新しくこの世に生まれ入った生命のように少女(菊池あやこ)がトランクを持って現れる。傍らから森田真希が現れ、今度は傘を手に持った佐藤が付き人のように共に歩みだす。森田の踊りは実に表情豊かだ。その1つ1つの動きが異国のような世界を描き出しイマジネーションの彼方へとオーディエンスは誘われていく。このドラマティックに舞台が展開していくかと思うとそうではなく、闇の中から乙女達が現れがっちりと下肢を踏みしめ上半身ではアブストラクトなムーブメントを見せる。
そして成熟した男女のカップルの様なハルバートと佐藤と、まるで二人の若き日や未来の姿とも重なるような菊池と桑原文生による若々しいデュエットの2つの旋律が同時に時には交差をするように感傷的な世界を綴り出す。象徴的な情景は透明感のあるどこか懐かしい音色が包み込んでいく。ハルバートの明るく思弁的な作風は映画のようにシークエンスをつなぐことで超現実的な世界を描く現代舞踊の矢作聡子や飯塚真穂にも通じるものがあるだろう。

しかしハルバートが現代バレエの振付家であることを強く認識させるのはバレエという形式の表面にとらわれすぎることなく、ファンタスティックで重層的に夢と思索を織り上げる様な良質のスペクタクルを練り上げてくるようなところだ。1つの物語というよりは複数のストーリーが一場面に展開し見る側に解釈をゆだねるような場面は芸術的な技法として確立するなどすると良いだろう。

STAFF
照明/梶 孝三、足立 恒
美術/牧野良三
舞台監督/菰方伸明
音響/中村 基
衣裳/林 なつ子、キミホ・ハルバート、宮崎隆爾

演奏/東京ニューフィルハーモニック管弦楽団
指揮/渡邊一正
マネージメント/インターミューズ・トーキョウ
制作/(社)日本バレエ協会
担当/高木俊徳、赤城 圭、小川亜矢子、橋浦 勇、早川惠美子