谷桃子バレエ団 「ラ・バヤデール」

2006.2.24&25 東京文化会館


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Tani Momoko Ballet
La Bayadere

マグダベア(苦行僧):岩上 純

山野博大の電脳バレエ横丁徘徊

マグダベア(苦行僧):徳江 弥
谷桃子バレエ団が四半世紀ぶりにメッセレルの「ラ・バヤデール」を上演

 谷桃子バレエ団がS・メッセレル女史の指導による「ラ・バヤデール」全幕を日本初演したのは1981年1月のことでした。それから四半世紀が経ちました。
 メッセレル女史は、ロシアのバレエの名門メッセレル家の一員です。彼女のお兄さんのアサフ・メッセレル氏はボリショイ・バレエの歴史に残る名ダンサーであり、その奥さんはイリナ・チホミルノワさんなんです。そして世界的名声を今なお維持しているバレリーナのマイア・プリセツカヤさんは姪御さんにあたります。

 そういうすばらしい家庭環境に育った彼女は、ごくしぜんにボリショイ・バレエのプリマとなり、活躍しました。そして数々の名舞台を踏んだのです。そのひとつがゴルスキー氏が演出した「ラ・バヤデール」というわけです。

バラモン(大僧正) :赤城圭& ニキヤ: 佐々木和葉
赤城圭& ニキヤ: 朝枝めぐみ
佐々木和葉
 そのメッセレル女史の指導により谷桃子バレエ団は「ラ・バヤデール」全幕を日本初演しました。
 その時の配役は、ソロル=ミハイル・メッセレルさん(メッセレル女史の息子さん)、ニキヤ=尾本安代さん/広瀬和子さん(交替)、ガムザッティ=大塚礼子さん/前田藤絵さん(交替)、大僧正バラモン=小林恭さん、黄金の仏陀の踊り=高田止戈さん、太鼓の踊り=大岩静江さん、齊藤彰さん、児玉克洋さん、第3幕のバリエーション=高橋加代子さん、ばんざいすみれさん、山本慶子さん、佐藤弥生子さんとなっていました。それから、つぼの踊りのソロは鈴木和子さんで、その子どもの役に高部尚子さんが出ていたのです。

 それから四半世紀後の今回の配役は、ニキヤ=佐々木和葉さん/朝枝めぐみさん(交替)、ソロル=齊藤拓さん/今井智也さん(交替)、ガムザッティ=樋口みのりさん/林麻衣子さん(交替)、大僧正バラモン=赤城圭さん、黄金の仏陀の踊り=松島勇気さん/桑原智昭さん(交替)、バリエーションI=前田新奈さん/宮城文さん(交替)、バリエーションII=永橋あゆみさん、バリエーションIII=川瀬美和さん、相澤美和さん/黒澤朋子さん(交替)となっていました。

佐々木和葉 &ソロル:齊藤 拓
ソロル:今井智也 & 朝枝めぐみ
 第1幕では、軍人のソロルが寺院の巫女であるニキヤと相思相愛の仲であること、そのニキヤに大僧正のバラモンが横恋慕していることが明らかになります。二人の愛の踊りを盗み見たバラモンは嫉妬の炎を燃やします。
 そして第1幕第2場に入ると、なんとソロルが領主の娘ガムザッティと婚約してしまうのです。領主の娘を妻に迎えれば、将来の出世まちがいなしということで、ついついニキヤのことを忘れてしまったのでしょう。
 大僧正バラモンは、領主を訪ねてニキヤとソロルの間柄を伝えます。ことの成り行きを知ったガムザッティに対してニキヤは、ソロルは私のものと迫ります。しかしガムザッティは身につけていた宝石を与えて、ニキヤにソロルのことを諦めさせようとします。
女官ソリスト:川瀬美和、宮城 文
女官ソリスト:川原亜也、黒澤朋子
 第2幕は、ソロルとガムザッティの婚礼の場です。余興のダンスが進んだところで、領主はニキヤに祝福の踊りを命じます。悲しみにうちひしがれながらもニキヤは踊ります。
 そのニキヤの手に二人への祝いの花籠が手渡されるのですが、その中には毒蛇が仕込まれていました。毒蛇に噛まれた瀕死のニキヤに大僧正のバラモンが解毒剤を与えます。しかし絶望したニキヤはそれを投げ捨てて死を選ぶのです。
 このようなエキゾチシズムにあふれたドラマチックな展開を伴ったバレエが、19世紀には好まれました。当時のバレエは、珍しい世界の風俗を伝えるメディアとしての役割も果たしていて、そういうものを見たいという人が多かったからです。
ドグマンタ(領主):陳 風景&赤城 圭
黄金の仏像:松島勇気
黄金の仏像:桑原 智昭
ドロラグヴァ(隊長):梶原将仁
つぼの踊り:布施麻衣子
つぼの踊り:瀬田統子
 まず冒頭、人目をしのんだニキヤとソロルの密会の踊りを佐々木和葉さんと齊藤拓さんがみごとに演じました。
 その前にバラモンがニキヤに言い寄るのですが、そこは赤城圭さんの見せ場です。日常はむしろさっぱりとした印象の赤城さんが、いかにも嫌らしくニキヤを抱きしめるところはほんとうに見ものです。
 そしてニキヤとガムザッティの争いの場では、佐々木さんと樋口みのりさんが火花を散らします。その直後にニキヤは黄金の仏像に救いを求めるのですが、その仏像の踊りの松島勇気さんの好演も見逃すことができません。かつてロイヤル・バレエが来日して「ラ・バヤデール」の全幕をやっているのですが、その時に黄金の仏像の踊りをやった熊川哲也さんの名演に匹敵するほどのものだったと思います。
 さらに次の婚礼の場には、さまざまなディベルティスマンがあり、谷桃子バレエ団がダンサー層の厚さを示します。
 その後のニキヤの死の踊り、そこへ救いの手をさしのべるバラモンの演技と見どころが続きます。
パ・ダクション・ゴールド
加藤絵利、依田久美子、上島里江、布施麻衣子
パ・ダクション・パープル
田村 梓、伊藤さよ子、緒方麻衣、木田玲奈
齊藤 拓& ガムザッティ: 樋口みのり
今井智也 & ガムザッティ:林麻衣子