2014都民芸術フェスティバル参加公演
公益社団法人日本バレエ協会公演
アンドレ・プロコフスキー版「アンナ・カレー二ナ」全幕

2014.1.11&12 東京文化会館・大ホール

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Japan Ballet Association Presents
Andre Prokovsky Vertion Anna Karenina


桜井多佳子の感じた!バレエ

巨大な機関車に負けぬ存在感

 アンドレ・プロコフスキー振付の『アンナ・カレーニナ』を日本バレエ協会は過去に二回上演している。1992年の初演はガリーナ・クラヴィヴィーナ、ウラジーミル・マラーホフ、イルギス・ガリムーリン、98年にはヴィヴィアナ・デュランテ、ホセ・カレーニョと、海外からスター・ダンサーを招いての実現だった。
 その後、法村友井バレエ団が単独バレエ団として初演、2009年には東京(新国立劇場)でも上演している。今回は同バレエ団団長であり自らもカレーニン役で絶賛された法村牧緒が監修、同バレエ団ミストレスで、やはり『アンナ・カレーニナ』に出演経験のある杉山聡美が振付指導。プロコフスキー(2009年没)と親しく接し、直接、指導を受けてきた両人は、大切にていねいに『アンナ・カレーニナ』を伝えたのだろう。端役に至るまで出演者全員が迷いのない演技を見せていた。オーディションで選ばれたというダンサー集団は、言葉悪くいえば「寄せ集め」のはずなのだが、一体感があり、感動的な舞台に仕上がっていた。
アンナ・カレーニナ:下村由理恵&ウロンスキー:佐々木 大
 11日、12日の三回公演は、タイトル・ロールがトリプルキャストで下村由理恵、瀬島五月、酒井はな。11日と12日マチネを観劇した。
シチェルバツカヤ(キティ); 佐々木和葉 &ウロンスキー:アンドリュー・エルフィンストン
 幕開きに出現する巨大な汽車は、何度見てもその迫力に圧倒される。やがて汽車から降り立つヒロイン、アンナ・カレーニナ。下村は、ここで存在感を放ち、見る者を一挙に舞台に惹きつける。レフ・トルストイの原作は全三巻という長編。それを3幕13場に纏め上げたのはプロコフスキーの才である。トルストイの小説は執筆開始から単行本上梓まで4年の歳月が流れているが、「プロコフスキーは4年がかりで、この作品をバレエ化した」(プレ・トークでの法村牧緒氏談)そうだ。さすがに丹念に練られた演出・構成である。ただ、そのドラマの流れを観客に伝えるのは、言うまでもなく、ダンサーの、特にアンナ役プリマの力量だ。
佐々木 大
シチェルバツカヤ(キティ):今井 沙耶&コンスタンチン・レーヴィン:浅田 良和
 ほどなく人妻アンナとウロンスキーは出会い、視線を絡ませる。場面は移り、第二場は、モスクワの広場。スケートをする人々たちの群舞も変化があり飽きさせない。チャイコフスキーの楽曲からガイ・ウールフェンデンが構成・編曲した音楽は、ときに登場人物の心情と同化し、あるいは、このシーンのようにダンスを彩り、また第二幕の雪だるまのシーンのように背景音楽のようにも奏でられる。江原功指揮、東京ニューフィルハーモニック管弦楽団は、その音楽の流れを大事にしていて好感がもてた。「譜面を信じた演奏」と言おうか、妙な主張はなく、素直に美しく響かせていた。そしてそれこそが最大の効果を生んだ。
アレクセイ・カレーニン:森田健太郎
下村由理恵&佐々木 大
 モスクワからペテルブルグに戻ったアンナをウロンスキーが追い、カレーニン邸の庭で二人は再会する。最初こそ冷静なそぶりを見せるアンナだったが、二人の仲は急激に親密になる。ウロンスキーに仰向けにリフトされ、片足を天に向けるようなダイナミックな動きで二人の高揚感は表されていく。下村と何度も踊っている佐々木大は磐石なサポートで彼女の熱情を包みこむ。
瀬島 五月&アンドリュー・エルフィンストン
 瀬島五月とアンドリュー・エルフィンストンは、夫婦ならではの一体感で、二人で造形美を創り上げていく。エルフェンストンの長身が映え、彼と踊りながら、瀬島の動きは、どんどん自由に解放されていく。それはまさに官僚の夫から気持ちが離れていく様、そして浮き立つような恋の視覚化だ。