スズキ・バレエ・アーツ
「くるみ割人形」
2009.12.24 鎌倉芸術館

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The Suzuki Ballet Arts
「THE NUTCRACKER」


Photographer's Eye

ダンス・スクエアの今年最後の取材はやはり「くるみ割り人形」になりました。スズキ・バレエ・アーツは 鈴木和子さんが主宰する 鎌倉のバレエスタジオです。谷桃子バレエ団のバレエ・ミストレスを努める 鈴木さんですので、所属の男性ダンサーが総出演と言えるほど大挙かけつけてくれました。谷桃子バレエ団ではめったに見られない「くるみ割り人形」ですが、それにかなり近いものが観られると期待が膨らみます。
お父さん:赤城 圭&お母さん:川喜多宣子
ドロッセルマイヤー:川島春生
ハーレキン:高橋真之
また「かぶりつきで撮影したい!」という願いに許可が出て、一番前の客席での取材できるのですから張り切らないわけに行きません。男性ダンサーの迫力ある写真が撮れるのはもちろんですが、細かい芝居や個々の表情などを見るには最高のポジションです。私の隣の席の母娘は初めて「くるみ割り人形」を見たようなのですが幕開きからクスクス笑っています。
コロンビーヌ:深澤麻帆
ムーア人:山科諒馬
クララ:森岡茉莉子
今夜はクリスマス・イブ、時を同じくしてロビーでも家族や友人が集い楽しげに歓談しています。

舞台でもなにやら不思議なおじさん ドロッセルマイヤーが現れました。奇術師としての演出もあるのですが、このスタジオでは プティパ・イワーノフ版を基にしているようです。もっとも オーソドックスな「くるみ割り人形」と言えるかも知れません。

注目したのはこのスタジオ生え抜きの男性陣でした。何年か前におじゃましたときはフリッツだったり子ネズミだったはずの男の子が、堂々たる青年に成長していました。そろそろ他スタジオからも出演依頼が来ているのではないでしょうか?さらに(今回は出演していない)ボーイズクラスが控えているというのですから羨ましい限りです。
ねずみの王様:長清 智
くるみ割り人形:今井智也
もっとも女性陣も負けてはいません。永年プロを相手に舞台に立ってきたのですから、奥行きのある 鎌倉芸術館を縦横無尽に使いこなしています。雪のシーンなどは2階席から見たらさぞキレイだったことでしょう。
雪の女王:新井 望&雪の王:吉田邑那
スペインの踊り:高橋真之&田中理紗子
アラビアの踊り:染谷安友美
阿部亜祐美、平綿安奈、本城 円、宮野樹里
キャンディ・ケーキ:浜島寛、村田健一 ほか
くるみ割り人形の危機を救ったクララはお菓子の国に招待されます。雪の国・海底の国を通ってやっと着き、大歓迎を受けます。お菓子の国に住む妖精たちチョコレートの精、コーヒーの精、アーモンド菓子の精など具体的なお菓子の名前をあげる演出もありますが、ここでは国別の民族的なダンスを披露しました。でも、その頃の子供たちのあこがれだった “金平糖”というお菓子を現代っ子は知っているのでしょうか?
中国の踊り:松岡恵美、山科諒馬
ロシアの踊り:桑折英理子、脇森 蘭、下島功佐
カーテンコールにはキャンディーのプレゼントがありました。思いがけないプレゼントに子供たちは大喜びです。男性ダンサーが全力で投げるキャンディーもさすがに3階席までは届きませんが1階の後ろの方まで盛り上がっていました。
フランスの踊り:浜島冬美、水上優里奈
金平糖の女王と王子のグラン・パ・ド・ドゥ:滝井真樹子、今井智也

私は思います。
雨の日も風の日もスタジオに通い続けた生徒たち、それだけで、今日舞台に立ったすべての少女がクララで、すべての少年がフリッツです。

踊り終えた生徒たちは自分自身が物語の主人公だということに気づいているはずです。そして有形のプレゼントよりも大事なものを手にした子供たちはその尊さを誰よりも知っています。すでにハートに小さな灯を灯しているバレリーナの卵たち、そっと見守り見えないように手助けするのが両親や教師の役目ではないでしょうか。

Merry Christmas!

STAFF
演出・振付/鈴木和子
(プティパ・イワーノフによる)
バレエ・ミストレス/川喜多宣子
照明/中沢幸子
舞台監督/菰方伸明
音響/矢野幸正