岡本佳津子によるバレエ小劇場

2006.8.28 世田谷パブリックシアター


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Katuko Okamoto
Et en avant ! 3e

「オープニング」
振付/岡本佳津子
ピアノ演奏/榎本まゆみ
曲/モーツァルト

バレエ&ダンス・ジャーナル★寺村 敏

 明るく楽しく、軽快、華麗で洒脱??。プロデューサー・岡本佳津子(日本バレエ協会副会長)の個性・美学が反映された素敵な公演であった。

 岡本佳津子は『オープニング』だけ振付を手がけた。若手21人がピアノ演奏(榎本まゆみ)に乗って白い衣装で踊る。モーツァルト『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』と融和した動きはG・バランシン作品を思わせ、観客の心を弾ませた。
「エスメラルダ」
曲/ブーニ、ドリゴ
小林洋壱&鈴木直美
 古典のグラン・パ・ド・ドゥが2つ上演された。
 鈴木直美(井上バレエ団)と小林洋壱(東京シティ・バレエ団)が『エスメラルダ』を踊った。共に手堅い技術を生かした折り目正しい動きが心地よい。必要以上に華美にせず品格を保ったパ・ド・ドゥに好感を抱いた。

 『ドン・キホーテ』は対照的に極めて派手であった。踊り手は新国立劇場の堀口純と市川透の長身コンビである。2人の気迫がすごい…。
 堀口純は華麗な雰囲気を備えている。岡本佳津子は堀口純に自分が若いころ披露した華麗さを表現させたかったのかもしれない。美しかった…。ヴァリエーションを踊った高橋静香と田中りなが共に好演。
「ある日突然!」
振付/堀 登
曲/Julius Fucik
 堀登が創作した『ある日突然!』が楽しかった。
 <女>(宮嵜万央里)と<男>(長瀬伸也)が個々に自室で目覚めて通勤途中で出会い、はにかみながら愛を感じた後に、結婚するまでを何と7分間で描いてしまう。宮嵜万央里が“かわいい女”を、長瀬伸也は“戸惑い照れる男”を好演して大きな拍手を浴びた。
長瀬伸也&宮嵜万央里
「ドン・キホーテ」
曲/ミンクス
市川 透 & 堀口 純
「Give」
振付/坂本登喜彦
曲/Kandis
 この日の主作品は2つ。坂本登喜彦振付『Give 』は島田衣子(井上バレエ団)を核に12人が黒い衣装で踊るコンテンポラリー仕立ての作品。

「暗」と「明」の空間を行き来する動きが多様で[混沌とした現代社会・雑踏の中の孤独]を思わせる。暗闇に白を浮き立たせるブラックライトを使う照明(デザイン=古賀満平)と融和した…。

島田衣子
「LOVE is DANCE」
振付/篠原聖一
曲/ガーシュイン
長瀬伸也/大金歩/田中りな
 最後に上演された篠原聖一振付『LOVE is DANCE』は軽妙洒脱なシンフォニック・バレエ。G・ガーシュインの曲に乗ってピンクの衣装組と黒い衣装組が踊る。

 都会の夜景をバックにした全11景はすべて明るく軽やかである。出演者全員が粋(いき)でお洒落な香りを漂わせた…。第10景を踊った鈴木直美・堀口純・宮嵜万央里が美しく、若手では田中りな、大金歩、平川愛弓、金内紗希、大久保茉麻、山田優帆が、年少組では細矢南と藤井紫乃が印象に残り、唯一の男性・齋藤由都が健闘…。

2006年8月28日 世田谷パブリックシアター所見

てらむら・さとし=舞踊ジャーナリスト

齋藤由都
松田多恵子/小林洋壱/杉山周子
小林洋壱/長瀬伸也/市川 透
坂本登喜彦/篠原聖一/岡本佳津子/堀 登
STAFF
照明/古賀満平
舞台監督/相馬勝己
音響/貫井政仁
衣裳/(株)柊舎 他
バレエミストレス/島田衣子
アートマネージメント/岡本佳津子