井上バレエ団 7月公演 「シンデレラ」

2009.7.19 文京シビック大ホール

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Inoue Ballet
「CINDERELLA」

シンデレラ:島田衣子
継母:足川欽也、姉娘:堀 登、         妹娘:坂本登喜彦

ベテラン陣と力を付けたソリスト達のハーモニー

伊地知優子

 井上バレエ団の公演は、海外から男性主役を招待するのが常で、世界的ベテランスターから新進スターまで、おしなべて適役といえる実力派が多い。今回はパリ・オペラ座のプリミエダンスールのエマニュエル・ティボーと牧阿佐美バレエ団・プリンシパルの森田健太郎が王子です。シンデレラ役は藤井直子と島田衣子。話題は継母に足川欽也、意地悪姉妹に堀登、坂本登喜彦という役作りに定評のある3人を揃えたことです。
ダンスの先生:中尾充宏
仙女:小高絵美子&島田衣子
 所見の日はティボー/島田組です。
 島田シンデレラは幕開きから継子のいじけた感じはなく、明るくごく普通に姉たちの横暴を受け入れ、それが日常のことを観客に分からせます。舞踏会のための仕立て屋もダンス教師も、普通は姉2人だけを相手にしますが、ここでは(関直人振付・演出)真っ先にシンデレラに近付き、このヒロインが人に好かれている、または格別に美しいことを暗示するなど、ちょっとした演出の工夫で人物や状況を物語ります。
春の精:宮嵜万央里
夏の精:仲秋亜実
秋の精:高村明日賀
冬の精:鶴見未穂子
時の精:西川知佳子
ピエロ:荒井成也
 華やかな宮廷の場面で初めて登場する王子は、若々しく、星の精に導かれて登場したシンデレラに相応しいマナーで迎えます。リフトを多用して貴婦人たちのドレスの広がりが華麗なアンサンブルを構成する宮廷では、継母親子の場違いな振る舞いは、ピエロ(荒井成也)が相手を引き受けます。ピエロのおしゃれなブルーの衣装が姉妹たちよりも華麗で美しいのが面白く、姉妹のどたばたは割合にあっさりと仕上げています。

姉妹と継母は我が家でその性格を発揮しますから、1幕と終幕で活躍し、宮廷の場はシンデレラと王子のための場、というふうに、うまくドラマの起伏を成しています。そのためか人物は人数、描写ともに簡潔で、オレンジは1人のソロ(田中りな)、時の精(西川知佳子)も1人のソリストがしっかり踊って存在感を見せています。もう1人のソリスト、仙女(小高絵美子)も力のある人ですから、踊りによる見せ場がいま少しほしかった気がします。

オレンジの精:田中りな