上田遙ダンスリサイタル
「翼の見る夢 Vol.3」

2008.10.11〜13 草月ホール

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Haruka Ueda Dance Recital


「サーカス・サーカス」

上田遙
児玉麗奈& 佐藤一哉

才能が集うハートウォーミングなパフォーマンス

吉田悠樹彦
 上田遥は多くの人たちに解りやすく入りやすいエンターテイメントを探求しているアーティストだ。ヴァラエティに富んだキャストも大きな魅力である。今回で「翼の見る夢」シリーズはVol.3だ。長年、ファンに愛されてきた理由はこの作家ならではのハートウォーミングな作風があるかもしれない。

「サーカス・サーカス」は明るくコミカルな一品だ。明るく弾けるようなショーのテイストのエンターテイメントだ。幕が開くとファンタスティックな世界が流れだす。一列に並んだ踊り手たちが現れ大きく広がっていく。彼ら彼女たちの明るい踊りのあとにコミカルな上田が現れる。ヴァイオリン(森由利子)やピアノ(宮川彬良)の音色とともに盛り上がり、歌声が舞台を彩っていく。バレエ・テクニックとともに人形のように演技を見せるのは児玉麗奈だ。そのキャラクター性を活かした愛らしい演技にユーモラスな佐藤一哉が絡んでいく。

穴吹淳
児玉麗奈&穴吹淳
池上直子&穴吹淳
三木麻里/池上直子/西澤美華子/穴吹淳/若林美和/田中友紀/中村友里子
ピアノ:宮川彬良&上田樹
若林美和、西澤美華子、そして三木麻里といった娘たちが素敵なショーダンスを踊ると近年大きな成長を見せている若手ダンサーの横洲良平が個性豊かに演技をみせる。この作品では大きくイメージチェンジをみせた池上直子に注目したい。池上はモダン・コンテンポラリーで定評がある実力派の若手ダンサーの1人だ。演出と衣装が容姿端麗なこの踊り手の世界を見事に引き出した。キュートないでたち、華やかな立ち姿、そして大人の女の表情で魅せる麗人がレビューならではの朗らかな踊りをみせる。優男の風貌の穴吹淳と愛し合うのだが、男の方は人形のような児玉に目がいってしまう。浮気をする穴吹に嫉妬しながらも許す表情のシーンでの感情表現が見事だ。そんなこんなな様々なショートストーリーが展開した後、一同集い盛り上がって終演する。


「Beat Generation」

続く「Beet Generation」はダンサーたちがフラメンコで使うカホンを叩くシーンからスタート。強面だが力強い感情表現に定評があるフラメンコダンサーの箆津弘順ら刻みだすリズムが響き渡る。やがて足踏みを始めると同じフラメンコの踊り手のAmiらを中心にサパデアードが続いていく。響き渡る音は次第にアフリカンなビートとも重なってくる。どこかエスニックな音になってくると内田香が現れソリッドなムーブメントと共にソロを披露する。
平多利江
大貫勇輔/柳瀬真澄/箆津弘順
内田香
旬な踊り手によるシャープなムーブメントは一際目をひく。ベースやドラムが生リズムを刻みだすと若い踊り手のみではなくベテランたちも活躍を見せた。柳瀬真澄が鍛えられた身体を通じて時に優雅に時にスリリングなアクションを披露する。反響するリズム音の中でクラブダンサーのようなルックスで平多利江が溌剌とした表情で踊った。しなやかな肢体を持つ金田あゆ子とこれからの活躍に期待がかかる若手ダンサーの大貫勇輔、そしてソリッドな動きを切り出してくる穴井豪からも目がはなせない。
金田あゆ子&穴井豪

「翼の見る夢 Vol.3」

松島詩織&宮川安利
 最後を締めくくった「翼の見る夢Vol.3」はシリーズ作品だ。冒頭はサラリーマン(上田)と奥さん(尾本安代)がサラリーマンの日常生活の悲喜こもごもを描いていく。観客に何度も愛されているおなじみの展開なのだが、今回はテニスボーイ(清水フミヒト)とその仲間たちや夜の赤提灯の風景、そしてリフトを交えて宙を飛ぶトックリまで登場する。
上田遙/吉田まり/佐藤一哉
尾本安代/ 西島千博 /清水フミヒト
天使: 西島千博
やがて天使(西島千博)の物語がはじまる。盲目の少女(橘るみ)の目がみえるようにするためにお金がいる。不憫に思った西島は天使であることをやめ、人間となり軍隊で働くことを選ぶ。天使は戦いに傷つき目がみえなくなってしまうのだが、その一方で少女は目がみえるように幸せになる。だが女は目がみえなくなった男に気がつき呆然と立ちすくむ。橘は涙を流し迫真の演技でこの世の運命をなげく。先行き不安な時代との接点を感じさせる作品だ。
西島千博 &盲目の少女:橘るみ
女神:金田あゆ子& 西島千博
 各ジャンルから様々な才能を集めているだけあり表現にも幅がある公演だ。芸術家それぞれの得意技を活かしながらも同時に彼ら彼女たちが普段見せることができない横顔も引きだし、ファンに解りやすい形でその魅力を伝えていく姿勢はこのアーティストならではのものだ。上田の暖かな作風にやすらいだ一時だった

10月12日 ソワレ 草月ホール所見

舞踊批評家 吉田悠樹彦

橘るみ
橘るみ&清水フミヒト
STAFF

演出・振付・台本 :上田遙
音楽・作曲::宮川彬良
照明:足立恒
衣装デザイン:生澤美子
美術:河内連太
音響:実吉英一
音楽編集:坂出雅海、上田樹
衣装制作 :市川一美
舞台監督:森脇由美子
制作:アンクリエイティブ

西島千博 &橘るみ