大野一雄フェスティバル2008
「DoCodeMo System 横浜ダンス界隈2008
舘形比呂一
「棘」
2008.10.5 BankART1929 Yokohama

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BankART1929 Yokohama
Hirokazu Tategata
「棘」


Photographer's Eye

舘形比呂一さんから招待状が届きました。
場所は BankART1929 Yokohamaで10分程度の作品とのこと、ほかにも大野慶人、 ヨネヤマママコ、 プロジェクト大山、 Abe“M”ARIA、 大橋可也 各氏が参加されるようですが、私は次の文章に目を奪われました。

1999年、私が『月〜拘束から解放へ〜』という作品を踊った時、舞踏家 大野一雄先生より言葉をいただきました。

  常に美を求めてください。
  美こそ真実の母なのですから。

  貴方が激しく求めている芸術の今日、未来が
  世界のわかき人々と共に
  共感を持って発展することを期待します。

  貴方はそれができる大切な人です。
   (1999年10月14日 大野一雄先生より)

表現者として葛藤する自分の心に、この言葉はとても多くの勇気と希望を与えてくれました。

なぜ《 大野一雄フェスティバル》なのか。一読して理解しました。大作かどうかなど問題ではありません。この作品を見なければ 舘形ファンとして胸を張れないとさえ思ったのです。
「DoCodeMo System 横浜ダンス界隈2008」とは
横浜の街をめぐりながら、様々の場所で行われるダンス作品(1作品10〜15分のパフォーマンス」を地図とタイムテーブルを片手に観ていく、回遊型プログラムです。14:00にイセザキモールの Abe“M”ARIAさんから始まり17:00に赤レンガパークの 大野慶人作品で終演です。
“一流のアーチストから与えられる何か”に惹かれるのは私だけではありません。開演2時間ほど前から熱心な女性ファンが列を作って待っていましたが、この作品だけを目指してきのでしょうか? 会場に入ってまず目に付くのは下を向いた巨大なロボットです。ところがこれはロボットではなく人形をイメージしたものだそうで、創られたのはヤノベケンジさんです。ヤノベケンジ氏がチェルノブイリを訪れた体験から生まれました。《放射能を浴びて捨てられた人形が太陽に向かって甦るように立ち上がる。》とのこと。

この「スタンダ」の魂に触発された作品とプログラムにありましたが、問題はいつ立ち上がるかです。その時に 舘形さんがどのようなリアクションを起こすのか、ぶっつけ本番ですので私も観客も静かに踊りを見つめるだけです......。

咳ひとつたてない静寂の中で 舘形さんが踊り終えました。遠慮がちな拍手が盛大なものに変わり、カーテンコールが何度も何度もありました。

拍手の音が大きければ大きいほど、故郷を離れざるを得なかった少女の想いが私の胸に迫ってきます。“チェルノブイリはもう過去のこと”ではありません。この恐怖はヒロシマと同様に現在も続いていて、私たちにも起こりうるのです。

想像の翼をちょっと羽ばたかせるだけ で 私たちは“少女の未来”を信じることができます。
そのためにするべき事はあまりにも多いのですが......。

貴方はそれができる大切な人です。

写真・文 鈴木紳司

STAFF

出演・振付/舘形比呂一
演出・構成/木村和男
衣装/菊地はるえ